まぎがく大乱部! 大乱部編_プロローグ
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story by 間宮桔梗
221:まぎがく大乱部! 大乱部編
プロローグ
「オーーケィオーケィ!では、改めて……占星魔法部の部長となったアシモフだ。ひとまず、部員が全員集合してくれたことに俺は喜びを隠せない!ありがとう、みんな!ありがとう、拍手ありがとう!」
「全員って言っても、アシモフとあたしと***の三人しかいないけどねー」
***とステラのささやかな拍手に包まれながら、アシモフはわざとらしく大きな咳払いをする。
「さて、最初に決意表明といこうか。まず、この部は俺が開発した占星魔法を探求・研究するのが主な活動内容だ。自分で言っちゃなんだけど、占星魔法は無限の可能性を秘めている。けど、今の状態じゃまだまだ力不足だ」
そして、一人だけの研究ではどうしても限界がある……と続けるアシモフ。
「……俺には、どうしても追いつきたい人がいる。その人と同じ場所に行くためにも、俺はこの占星魔法の可能性を広げて、正式な魔法技術として学校に認めさせたい。まぁ、平たく言えば大きな成果を残したいというか、自分の力を学園に証明したいってところだ」
「はい部長、質問!」
「はいどうぞステラさん!」
「占星魔法を探求・研究するために、具体的に何をするのかを教えてほしいんだけど」
ステラの質問を受け、アシモフは指をパチンと鳴らす。
「無論、様々な学習分野から研究を行うのは当然として、だ。コホン……我が占星魔法部は“魔法技術学園公認部活動段位戦”に、運動部枠として参加することが決まった!はい拍手!拍手ありがとう!」
……通称、まぎがく段位戦。校内の部活動同士が試合を行い、腕を競い合うのが目的。
ランキング上位の部活動は部費を多く得られる他、無料食券の配布や個室寮の占有権、内申点の増加や大学への推薦権など……生徒にとってはこのうえなく魅力的な特典が手に入るらしい。
「魔力とは人間に宿る精神エネルギー。ゆえに、戦意や闘志といった感情は魔力の向上に直接作用する。魔力が多ければ当然、魔法の可能性も広がる。それは占星魔法も同じだ」
どうやらアシモフは特典よりも、段位戦に参加すること自体にメリットを見出しているようだ。
「現在、まぎがくには占星魔法部を含めて12の運動部がある。当然、立ち上げたばかりの占星魔法部は現在ビリだ。なので、まずは11位の合気道部を倒すことを目標に」
「ホホホホッ!そうはいきませんことよ!申し訳ございませんが、占星魔法部はこの場で廃部確定でございます!」
突然現れたのは、一人のお嬢様風の少女……その手には、禍々しいオーラを放つ剣が握られていた。
「あ、あなたは確か、魔法剣道部の……!」
「覚えてくださっていて光栄ですこと。そう、わたくしは剣道部にこの人アリとウワサの…………マルギッテ・ド・フランボワーズ・エル・シルフィ・チベルフスキー・マツモトでございます!」
堂々と自己紹介をしながら、お嬢様キャラにありがちな高笑いを浮かべるマルギッテ。
「ホホホホッ!お久しぶりですこと、ステラ。よもや剣道部を裏切り、新たな部活動を立ち上げて段位戦に参加するとは思いませんでしたわ。まったく、罪深い女ですこと!」
「う、裏切り?確かにあたしは元剣道部だけど、辞めた理由はケガが原因で戦えなくなったからであって……」
「言い訳無用!貴方はすでに折れた剣。敗した者は、無様に地べたを這いずり回るのがお似合いです!それに、占星魔法部などというワケのわからないお遊戯グループを、剣道部は絶対に認めません!全力で潰させて頂きますわよ!」
その言葉にカチンと来たのか……ステラは椅子から立ち上がり、鋭い目つきでマルギッテを見据える。
「ま、待った。ストップだステラ。怒るのはわかるが、相手はランキング1位の剣道部だぞ?それに、上位ランクからの“指名戦”を受けてもランキングに変動はない。ここはおとなしく部費を渡して引き下がってもらう方が……」
指名戦とは、上位の部活が下位の部活に挑む試合のこと。勝敗によってランキングの変動はないが、勝利した側はいくつかの褒賞を受け取れるらしい。
「あたしのことはいい。けど、アシモフが苦労して作った部活を“お遊戯グループ”って言ったことは取り消して、マルギッテ!もし取り消さないのなら……」
ステラは杖を手に持ち、ホルスターからタロットカードを一枚取り出した。
「ホホホホッ!そのようなチャチな魔法でわたくしに挑むなど言語道断!いいでしょう、では三人まとめてかかってきなさい!そして三人仲良く、わたくしの呪剣にお呪われなさいな!ジャッジさん、おいでませ!」
「ででんっ。どこからともなくジャッジさん登場です。では、これより上位部活から下位部活への指名戦を開始します……!」
>>迎え撃つ<<
ランキングに関係なく、一定数の【まぎがくメダル】を集めると役立つアイテムが貰えるらしいぜ。
オーーケィオーケィ!共にベストを尽くそう!
アイテムショップで手に入る「アレスの鍛錬書」を使えば、すぐにLv80になれるらしい。クールすぎるだろ!
「土地力」は占星魔法を使ううえで重要な力だ。しっかり溜めておこう!
どこまで突き進めるか、試してみたいんだ!
ムキムキのマッチョマンになったりしないよな……?
強い敵を倒せば多くの【まぎがくメダル】が貰えるらしいぜ。
情報は、他のプレイヤー達がイベント掲示板で教えてくれるんだってさ。
こいつはチェックするしかないな!
クエストか。
なかなか歯ごたえがありそうだ!
トップを目指す
芸術魅了バトル
ステラの予想外の奮闘により、アシモフ達は剣道部の刺客マルギッテを撃退することに成功した。
「わあ……初めての実戦で勝てちゃうなんて。やっぱりこの魔法、すごいんだ……」
「いや、すごいのはこの短期間でほぼ占星魔法を使いこなしている君だよ、ステラ。正直なところ、俺一人だったら負けてただろうし」
しかし……と、アシモフはあごに手をすえる。
「やっぱり魔力の消費量が多いのがネックだな。占星魔法の触媒となる、このカード……こいつをなんとかしないと占星魔法に未来はない。つまり、俺の未来は破滅への一途を辿る」
「えっ、そこまで大ごとなんだ!?だ、だったらすぐにでもなんとかしないと」
「慌てなくていい。実は、すでに手は考えてあるんだ」
占星魔法に使用するカードは、象徴となる魔術的なイラストに強いイマジネーションが宿っていると、より強力な効果を発揮するのだという。
そこで、アシモフは美術部の知り合いに協力を求めるため、ステラと***を引き連れて美術室へとやって来た。
「やあ、ルリカ!隣の席のアシモフだ!ちょっと頼みがあるんだけど、話を聞いてもらえるかな?」
「やだ。出てって」
「オーーケィオーケィ!じゃあ早速本題なんだけど」
「聞きなさいよ人の話を……」
いつも通りのアシモフのテンションに辟易しながらも、なんだかんだでルリカはアシモフの話を聞いてくれた。
「ふーん、なるほどね。要件は理解したわ」
「おお、さすがは俺の隣の席のクラスメイト!話が早くて助かるよ!それでさ」
「いや、引き受けるなんて一言も言ってないんだけど」
「…………えっ。あれ、マジで?『まかせんしゃい』って聞こえたんだけどな」
「幻聴ね。保健室へどーぞ」
大きなため息を吐きながら、ルリカはテーブルのパレットの上に筆を置く。
「アンタ、自分が話題になってるってこと気付いてる?剣道部の英雄だったステラさんを引き連れて妙な部活を立ち上げたかと思えば、学園トップの剣道部の一人を打ち負かしたって話じゃない。いい意味でも悪い意味でも注目されてるのよ、アンタ達」
「お、いい具合にウワサが広がってるみたいだな。まぁ、俺が目指すのは学園トップだ。話題になってもらわないと困るっちゃ困る」
「……あっそ。だったら、なおのこと美術部には関わらないでほしいのよね。見ての通り、うちの部活は争いとはほぼ無関係。部員全員が平穏な活動を望んでいるわ。もし剣道部に目をつけられでもしたら、間違いなく活動に支障が出るもの」
学園のトップに君臨する剣道部は、その権力で学園内の活動や行事、秩序などを取り仕切っている。ゆえに、この学校は剣道部員があらゆる面において優遇されているのだという。
「学園の運営に関わる風紀委員、選挙管理委員、予算委員に所属している生徒のほとんどは剣道部のメンバー。中でも、全ての部活動の予算案に関わることができる予算委員が剣道部の手に落ちてるのが厄介ね」
「……実質、全ての部活の活動権を剣道部が握ってるってことか。最近の連中の行動が目に余るとは聞いていたけど、まさか文化部にまで影響を及ぼしているとは知らなかった。なるほど、剣道部部長ロベルト・ハイルはすっかり支配者気取りってワケだ」
「そゆこと。だから、すでに目をつけられてる占星魔法部とは関わりたくないの。こちとら、ただでさえ剣道部のせいで思うように活動できてないんだから……」
「それなら問題ない。剣道部一強の時代は間もなく終わる。なぜなら、俺の占星魔法部が剣道部を倒すからね。だが、そのためには美術部の……君の協力が不可欠なんだ」
全く引く様子を見せないアシモフ。すると、ルリカは先ほどよりも大きなため息を吐く。
「何を言っても居座り続ける気みたいね……わかった、わかったわよ。相応の見返りをくれるなら協力したげる」
ただし……と、ルリカは条件を提示する。
「自分で言うのもなんだけど、私はモノを見る目には自信があるの。だから、あなたの占星魔法とやらが私のインスピレーションを刺激するかどうか……すなわち、本当に剣道部を倒す可能性があるかどうか。この場で見極めさせてもらうわよ」
……話し合いの結果、占星魔法の使い手であるアシモフとステラが互いに占星魔法を打ち合い、ルリカがそれを審査するという形式を取ることになった。
「いいだろう。ステラ、“魅せる戦い”とはいえ全力でやってくれて構わないぜ!俺も全力を尽くすからさ!」
ルリカを魅了する
段位奪取バトル
「……!ありがとう、ルリカ!このお礼は必ず!」
「感謝の気持ちは剣道部を倒して示して。とりあえず、明後日までには新しいカードを用意するわ。期待して待ってなさい」
こうして、美術部の協力を得ることに成功したアシモフ達。そして二日後……ルリカの宣言通り、期待以上の完成度をほこるタロットカードが完成し、占星魔法はより強力な力へと進化した。
「よし、この力さえあれば他の部とも渡り合えるはずだ。さっそく当初の目標の合気道部に段位戦を申し込みに」
「あ、待ってアシモフ!その前に生徒手帳を見て。ほら、ここ。まぎがく段位戦のシード権について……」
ステラが指差した項目には、以下のことが書かれていた。
『下位ランクの部活動グループが上位ランクからの“指名戦”に勝利した場合、そのグループは指名戦を挑んできたグループのランク以下の、全ての部活動グループへの挑戦権が与えられる』
「な、なるほど!つまり……どういうことなんだ。さっぱりわからない」
「おバカ!あたし達、剣道部のマルギッテの指名戦に勝利したでしょ?だから、ランキング最上位の剣道部を含めた、全ての部活動に挑戦できるの。つまり一気にトップを狙えるってこと!」
「なるほど、完全に理解した!けど、その権利はひとまず置いておこう。この部活動の目的はあくまで占星魔法の可能性を広げることだ。徐々に勝ち上がって腕を磨いていく方が方針に合っている」
「そ、それは確かにそうかもしれないけど。でも、あたしは早く剣道部の“あの人”と戦いたい。アシモフの占星魔法に興味を持ったのも、剣を使えなくても対等に剣道部と戦う力が欲しかったからで……」
「ステラの目的は知っている。だからこそ、生半可な実力で挑むわけにはいかないだろ?それに、占星魔法はまだ完全じゃない。今のまま剣道部の上位層に勝てるとは思えない」
「む、むぅ…………わかった。でも、合気道部に勝ったら次の対戦相手はあたしに選ばせて!剣道部とか弓道部みたいなトップ層には挑まないから。ね?」
アシモフは少し考えたあと、やれやれといった様子で首を縦に振った。
「了解。ステラがそこまで言うなら承諾しよう。とはいえ、まずは目の前の敵に勝ってからだ。よし、準備ができたら校庭に行こう!」
最下位である占星魔法部はシード権を使わない場合、一つ上のランクに君臨する合気道部にしか段位戦を申し込めない。
そして、段位戦を申し込まれた側が挑戦を断った場合は不戦敗となり、その部活動グループはランクが一つ下がってしまう。ゆえに、試合を申し込まれた側が挑戦を断ることは基本的にあり得ない。
「あーっ、来たな占星魔法部ッ!ウチの部に挑んでくるなんていい度胸だー!その挑戦、合気道部部長のこのムスビが引き受けたーッ!」
アシモフ達が校庭に辿り着くと、そこにはムスビと名乗る少女が立っていた。どうやら彼女が対戦相手のようだ。
「聞いて驚け占星魔法部!ウチの合気道部は以前、段位戦で三位まで上り詰めたことがあるッ!けどなー、ウチが数学Bで赤点取って補習を受けてる間に、合気道部は一気にビリまで落ちていた!理由は単純に、部活の規律が緩くて真面目に参加しているのがウチしかいないからだーッ!」
耳がキンキンするほどの大声を張り上げるムスビ。しかし、そのボリュームは徐々に下がっていく。
「結局、段位戦に参加できるのがウチしかいなくてなー。結果として落ちるところまで落ちてな。ウチ、あんまり人に強く物を言えるタイプじゃないんだ……だから、部活に参加してーとか部員に言えなくて……本当は部長になんて向いてないんだ……わかってるんだよぅ……う、ひぐうぅ……」
「オ、オーーケィオーケィ、君の苦労はよくわかった。わかったから涙を拭こう。ほら、ハンカチ」
「ちーーーんっ。うぅ、ありがとなぁ……優しいんだなぁ、君はぁ……」
ひとまず落ち着いたのか、ムスビはアシモフのハンカチを洗濯してから返すことを約束すると、先ほどの元気を取り戻した。
「さぁ、かかってこーい!武道を嗜む身としては一対一の戦いを所望する!というかウチ一人しかいないからなー!どうだ参ったかーッ!」
「フッ、悪いけど“参った”を言うのはそちらの方さ。ステラ、***。ここは新しいカードの実戦がてら俺が…………って、ステラ!?」
アシモフの前に立ち、堂々とした様子で杖を構え、ステラは新作のカードを一枚手に取った。
「大丈夫。ここはあたしに任せて、アシモフ。今のあたしでも十分に戦えるってとこ、見せてあげる!」
「ス、ストップだステラ!この新しいカードは今までとは少し勝手が違っ……」
「む?そっちの君は元剣道部のステラさんだったな。ぃよーし、なら相手にとって不足なしだーッ!かかってこーーいッ!」
どこからともなくジャッジさんが現れると同時に、ステラとムスビの一対一の段位戦が始まった。しかし、アシモフは額に冷や汗を浮かべていた……。
段位戦を行う
実兄指導バトル
「なな、なにぃ!?も、もう少しで勝てるとこだったのにぃ……ぐぬうぅ……」
ジャッジさんの正当な判定により、試合は占星魔法部の勝利となった。ムスビは落ち込んだ様子でその場から去って行く……。
「ぃよっしゃあ!すごいじゃないかステラ!君なら必ず勝てると信じてたぜ……!」
勝利を掴み、すっかり有頂天のアシモフ。しかし、その様子を見たステラはポカンとしている。
「アシモフ……もしかして、わからなかったの?今の試合、ジャッジさんが止めてなかったら絶対あたしが負けてたよ?」
「……え?マ、マジで?」
「うん。ムスビさん、すごく強かった。それにあたし、新しいカードを全然使いこなせてなかった。かといって、以前のカードを使ったとしても勝てなかったと思う。このままじゃ絶対、上には行けない……」
すると、ステラはアシモフに深く頭を下げた。
「……ごめんね、アシモフ。勝手に出しゃばったくせに情けない戦いしちゃって。あたし、剣道部と早く戦いたくて焦っちゃってたみたい」
「あ、頭を上げてくれステラ。仮に俺が戦っていたとしても、ステラより上手く戦えたとは思えないし……ってステラ、どこへ行くんだ?」
「自主トレ!今日みたいな恥ずかしい戦いはもうしたくないから、修行してくる!」
「それなら俺も一緒に……」
「しばらく一人で練習したい!じゃあね、アシモフ!」
悔しそうな表情のまま、ステラはその場から走り去っていった。
「…………くそ、バカか俺はッ!」
ステラが立ち去ったあと、アシモフは強く握った拳で壁を叩く。
「新たな力を手にして、それだけで強くなった気になっていた。実戦不足ゆえに戦いの内容に目が向かず、形だけの勝利に喜んでいた……こんなんじゃ、いつになっても兄さんの隣には立てない……ッ!」
近くのベンチに深く腰掛け、自分の不甲斐なさに震えるアシモフ。
「……それとも、占星魔法はここが限界なのか?ステラほどの実力者が使ってもダメなら、俺なんかが使ったところで……やっぱり俺には魔法の才能なんてないのか?なら、俺は何のために……」
「ハァーッハッハッハ!何やらセンチメンタリズムの海にどっぷり沈んでいるようだな!愛する弟よ!」
突然、アシモフが腰かけているベンチの下から一人の男がにょきっと顔を出す。
「イ、イザァーク兄さん!?どうしてこんなところに……てかなんでベンチの下から」
「イェーースイェース!よくぞ聞いてくれた!ほら、今は文化祭シーズンだろう?ウィノ先生に呼ばれて、まぎがくの卒業生代表として講演会を開くことになっていてな。しかし、我が弟よ……その様子だと、先ほどの段位戦のことで落ち込んでいるようだな」
「……えっ。ま、まさか、みてたの?」
「当然じゃあないか。フッ、可能であればこの約120度の視界の中に常にお前を写していたいのだが……まぁそれはさておき、お前の落ち込んだ顔を見るのは兄として非常に辛い。そこでだ!」
すると、イザァークは愛用の剣を手に取ると、その剣に魔力を纏わせた。
「占星魔法とやら、なかなか悪くない力だった。だが、力というものは示せなければ意味がない。このまま力を示せなければ、お前の部活は解体されるだろう。今、お前は絶体絶命のピンチなんだ!」
しかし……と続けるイザァーク。
「ピンチというのは、自分のクールレベルを上げるこのうえないチャンスだ!重要なのは結果に落ち込むことじゃない。結果を分析することが大切なのさ!さぁ、来い!お前の熱い青春を俺にぶつけるんだ!そうすれば、お前に何が足りないかが見えてくるはずだッ!」
その言葉にピンと来たのか、アシモフはベンチから立ち上がり、タロットカードを一枚手に取った。
「……わかった。確かに、兄さんに直接指導をしてもらえる機会なんて滅多にない。だから……全力で行くぜ、兄さん!」
熱い青春をぶつける
可憐淑女バトル
「……ああ、思い知ったよ。いかに俺が実戦不足で、いかに力を使いこなせていないか。そして、俺はまだまだ強くなれることも、この力にはまだまだ可能性があることも」
どうやらアシモフは、イザァークとの戦いの中で確かな実感を掴んだようだ。
「そうだ。最初から可能性を閉じてたんじゃ何も掴めない。何も示せないんだ。そんな簡単なことすら俺は知らなかった……兄さんの隣に立つことばかり考えてちゃダメなんだ……!」
「その通りだ、弟よ!大切なのは未来を見据えることでも過去を顧みることでもない。未来も過去も変えることはできないが、今という瞬間だけは自分の意志で変えられる!俺の隣に立つという未来に向かうのではなく、お前が求める“今”へと現実を変える!それが青春なんだぜ!」
高笑いを上げながら、弟の成長を心から喜ぶイザァーク。
「兄さん、頼む!もっと俺に修行をつけてくれ!兄さんが導いてくれれば、俺はもっと……」
「落ち着け。そうしたいのは山々だが、俺は為すべき目的のために自らの時間を費やさねばならない。だから、常にお前の傍にはいられない……そこでだ。いいスポットを教えてやる。ついてこい!」
イザァークはアシモフを連れ、学区内の図書館ホールの最上階へと向かった。そして、人けのない奥の廊下に進むと、ベタベタと壁を触り始める。
「イェーースイェース!少し目を閉じていろ、弟よ。確かこの辺りに……ああ、ここだ。さて、呪文は確か……」
小さな声で何かをつぶやくイザァーク。すると、次の瞬間……アシモフは中世の神殿のような、広々とした薄暗い部屋に立っていた。
「な、なんだここ!?俺達、さっきまで図書館ホールにいたはずじゃ……」
「在学中に俺がコッソリ作った秘密の部屋さ。他の人には内緒だぜ?禁術まがいの魔法技術で作った固定型隔離異界空間だからな。それと、もう一つ……」
部屋の中央にある巨大な魔法陣。どうやら、これもイザァークが作り上げたものらしい。
「こいつを作動させると空間凍結式が部分的に解除され、並列進行世界と連結すると同時に……あー、要するにだ。登録してある異世界に魔術的にアクセスして、そこに住む強者達の記憶幻体を一時的に具現化することができるってことだ」
コホン……と一つ咳払いをすると、イザァークは魔法陣を起動させた。
「さあ、出でよ異界の者達よ!そして、我が愛する弟を成長の道へと導いてやってくれ!」
風と共に、目も眩むような凄まじい光が魔法陣から発生する。やがて光と風が止むと、そこには数人の幻体が立っていた。しかし……。
「…………。あのさ、兄さん。なんかやけに成長期の女の子が多いっていうか」
「バッキャローーーッ!!」
「痛すぎるっ!な、なんで殴るんだよ!?」
「お前も知っているだろう!?魔力というのは精神状態が大きく影響する力だ!そして、この魔法陣を開発した頃の俺は年頃の男の子だった……どうせ稽古してもらうなら、可憐な女の子達と一緒に稽古したいだろう!?そっちの方が魔力の質が上がると思わないか思うだろう!?思わないなら思ってくれ!」
「わ、わかったって!兄さんがロリコ……じゃなくて、真剣なのはよくわかったから!」
とはいえ、イザァークは首席でこの学校を卒業している。ならば、兄の語る理論もあながちウソではないのかもしれない……と思いながらも、アシモフはちょっと引いていた。
「……まぁいいか。幻体が相手ってことなら、思いっきり力を使える。よし……女の子を相手にするのは少し気が引けるけど、相手にとって不足はなさそうだ!」
深く言及するのをやめ、アシモフは幻体を相手に修行を始めるのだった……!
修行開始
超文化部バトル
「はぁ、さすがに一人じゃ限界があるか。やっぱり相手がいないとキツイかも……」
とはいえ、段位戦に参加する運動部は基本敵同士。おまけに新参者である占星魔法部は他の部から警戒されているため、ステラの技量に見合う修行相手を見つけるのは困難を極める。
「せっかくアシモフがすごい力をくれたのに、あんな情けない戦いしちゃうなんて。はぁ、こんなんじゃアシモフに顔向けできない……。期待、裏切っちゃったよね……」
戦いも修行も上手くいかず、途方に暮れるステラ。そんな時、一人の女子生徒が訓練場の近くを通りかかった。
「お~?ステラちん、こんな遅くに何してるんだい?そろそろ寮の消灯時間だから戻らないとマズイよぉ?」
「……あ、ハーシェル。ふふ……あなたの方こそ、こんな遅くまで一人で実験してて大丈夫なの?」
「にゃはは。ま、アウトっちゃアウトかもねぇ。にしても、なんだか思いつめた様子だったけど、どったん?あたしでよければ相談に乗るよ~?」
彼女は化学部に所属している女子生徒で、ステラとは一年の時から同じクラスで仲が良い。ひとまずステラは世間話がてら、占星魔法部と自分の状況をハーシェルに話す。
「ふむふむ、にゃ~るほどねぇ。つまり、惚れた男を見返すために強くなりたいけど、修行してくれる相手がいないと」
「ほ、惚れてないから。誰があんな変人に……まぁ、ケガで戦えなくなったあたしに手を差し伸べてくれたりとか、自分に足りないものを補うために努力するトコとか、周りに何を言われてもくじけないで頑張るトコとか、前に進むことを絶対やめないトコとか、いいトコもちょっとはあるけど」
「いいトコいっぱいじゃないかぁ。チッ、破裂して四肢ごと吹き飛べやアシモフ……じゃなかった。とりあえず、ステラちんの事情はよぉ~くわかった。となれば、ここはあたしが一肌脱いじゃおう!」
そう言うと、ハーシェルはスマホのグループ通話機能を使い、二人の生徒を呼び出した。
「……?ハーシェル、この子達は?」
「あたしが設立した“ステラファンクラブ”の精鋭達だよん。運動部から練習相手を見つけるのは難しいかもだけど、文化部なら問題ないっしょ?」
「え、なにそのファンクラブ怖っ……じゃなくて。えっと、じゃあ……協力してくれるの?」
「もちろん!ほら、剣道部の支配を受けずに文化部が活動できてるのは、ステラちんが剣道部だった頃に権力者達に逆らってくれてたおかげだし。その恩返しも込めて協力したいっていうか。もっとも、剣道部からステラちんが居なくなってから、また剣道部の支配が強くなってるんだけどさぁ……」
だから……と、ハーシェルは笑顔で続ける。
「文化部は占星魔法部に結構期待してるんだなぁこれが!ちゅーことで、遠慮なくかかってこーいステラちーん!」
「う、うーん。気持ちは嬉しいけど。さすがに文化部の子達を相手に占星魔法を使うのは……わ、うわわっ!?」
……気が付くと、ステラはハーシェル達に囲まれていた。
「ちなみにあたし達、剣道部が実力行使に出た時に備えて相当鍛えてるから、下手するとステラちんでもやられちゃうと思うよ~?」
「な、なにそれ怖っ……でも、修行相手としては申し分なさそうかも。よし、そうと決まれば……あたしも遠慮なく、おもい~っきり戦うよっ!」
文化部と修行する
弓剣乱部バトル
どうやら、ステラは戦いの中で強さのヒントを掴んだようだ。
――こうして、アシモフとステラは各々の足りない部分を補うために別々に修行を重ねた。そして数週間後の放課後……占星魔法部のメンバーは久々に部室へと集まった。
「やあ、ステラ。なんだかすごく久しぶりな気がするな。その様子だと何か吹っ切れた感じかい?」
「うわあっ!?ア、アシモフの方こそ、なんかめっちゃムキムキになってない……?一瞬誰かと思った」
「まぁな。理論と理想に頼りすぎてた自分に喝を入れるためにロリコ……兄さんと秘密の武者修行に明け暮れてね。とりあえず、君に“強くなった”と言われたということは、自信を持っていいってことかな」
アシモフとステラは以前よりもひとまわり以上強くなり、ムスビとの戦いで失いかけていた自信もしっかりと回復したようだ。
「……ステラ、改めてよろしく頼む。俺には君が必要だ」
「それもこっちのセリフ!一緒にがんばろ、アシモフ!それにしても筋肉すごいね」
それから二人は次々と強敵を打ち破り、段位戦を勝ち抜いていった。数日後には三位に食い込み、残す相手は二位の弓術部と、一位の剣道部だけとなる。そして……
「久しいな、アシモフ・アンドリュー。まさか、かの負け犬がここまで上り詰めてくるとは思わなかったぞ」
弓術部に段位戦を申し込んだ直後。占星魔法部の前に立ち塞がったのは、剣道部の部長ロベルトだった。
「言ったはずだぜ、ロベルト。俺は自分だけの力を見つけてアンタに勝つと。しかし、そっちから指名戦を申し込んでくるとは予想外だったな。指名戦はランキングに変動があるわけじゃない……敵情視察のつもりかい?」
……どうやら、アシモフとロベルトの二人には何か因縁があるようだ。
「前哨戦と思ってくれればいい。もはや、剣道部でお前達と対等に戦えるのは部長であるこの俺と、ステラとの戦いを望むミクリぐらいのものだ。しかし、ミクリはあくまでステラと一対一での頂上決戦を望んでいる。ミクリの意志を尊重する場合、指名戦を申し込まなければ俺の出る幕がない」
ミクリとは、以前からステラが戦いたいと望んでいた生徒の名前。ロベルトの話によると、ミクリもまたステラとの戦いを望んでいるらしい。
「加えて、俺個人としては……ステラ。貴様にはミクリと戦ってほしくないのだ」
「……?どゆこと、ロベルト?」
元剣道部であるステラは当然、ロベルトと面識がある。当時からステラは彼のことを強者として意識していたが……どうも、ロベルトはステラに対して複雑な想いを抱いているようだ。
「ミクリは……彼女はいつも貴様のことだけを見ていた。その視線は決して俺には向かない。もしお前達が戦えば……勝敗はどうあれ、ミクリはますますお前に入れ込むようになるだろう。俺という存在など、眼中になくなるに違いない」
ロベルトの言葉を聞き、ステラはとあることに気が付く。
「あ、あなたまさか、ミクリさんに振り向いてもらいたくて学園を支配するようなマネを!?ぶ、不器用すぎでしょ」
「フン、個の力で彼女のお眼鏡に適わなかった以上、俺にできることは個ではない別の力を誇示することのみ。それに……ここで俺が貴様に勝てば、ミクリはお前に対して興味を失くすかもしれん。それは俺にとって実に好ましい状況と言える」
「うわ、自分勝手極まりない動機……。けど、自分の目的に一途な人は結構嫌いじゃないんだよね、あたし。だから、あなたの挑戦は受けたげる。それに、ここで逃げたら占星魔法部が剣道部よりも劣ってるって認めるようなものだしね!」
そう言うと、ステラとロベルトは戦闘態勢に入る。
「……やれやれ。剣道部の痴話喧嘩に弓術部を巻き込まないでほしいものだな。となれば、こちらはこちらで段位戦を行うとしよう。それでいいかな?後輩クン」
時を同じくして、弓を持った一人の女子生徒がアシモフに声を掛けてきた。
「……!あなたは、弓術部部長のヨイチ先輩……。す、すみません。弓術部と試合するはずが、なんだか妙なことになってしまって」
「構わんよ。私は元々、あのイザァーク殿の弟であるキミの方に興味があったからな。しかし、あちらの戦いが気になって集中できないということなら、日を改めても構わぬが」
「……いいえ、大丈夫です。ステラなら絶対に勝てると信じているので」
「フッ、そうか。実に理想的な関係を築いているとみえる。では、こちらも遠慮なく弓を振るうとしよう……。簡単に倒れてくれるなよ?後輩クン」
未来の力に抗う
最上学生バトル
実力の何倍もの力を発揮し、ギリギリのところでヨイチに勝利したアシモフ。そして……
「認めたくはないが、認めざるを得ないのだろうな……。俺の完敗だ、ステラ」
敗北を認めたロベルトは、力の抜けた微笑を浮かべながら剣を下ろす。
「これが俺の限界か。いや、本当はわかっていた……怖かったのだ、俺は。もはや学園を支配することでしか力を誇示できない以上、一度でも敗北を喫すれば全てを失う。ゆえに、どんな手を使ってでも俺はトップに立つ必要があった。が、結果はこれだ。我が剣道部の敗北は、他でもない俺の弱さが……」
「剣道部の敗北を認めるのは早いんじゃないかな、ロベルト君。今の君の戦いは指名戦であって段位戦ではないのだから」
アシモフ達の前に現れたのは、高貴な雰囲気を纏った一人の女子生徒だった。
「ロベルト君。君は今、とても良い顔をしているね。あらゆる重荷から解き放たれ、ようやく本当の自分を見つけた……そんな顔をしている。今のキミとなら、ぜひ手合せを願いたいぐらいだ」
「……!ミ、ミクリ……お前……」
ミクリ。それは、ステラが戦いたいと願っていた者の名。そして、ロベルトを越える実力を持つ真の武人の名だった。
「久しぶり、ステラ君。それにアシモフ君だったね。君には心から感謝しなければならない。剣を握れなくなり、再起不能になりかけていたステラ君に立ち上がる力を与えてくれたのだからね。それはきっと、君だけの“魔法”なんだろう。君は自分自身を誇るべきだ」
「あはは。そう畏まらないでおくれ、アシモフ君。だいたい、単純な強さなんてものは日々増減するものだ。魔法という不可思議な現象が関わるのであれば、それはなおのこと」
ところで……と、ミクリは優しげな笑みを浮かべながら続ける。
「アシモフ君。実力が拮抗した者同士が戦った時、最後に勝敗を分ける要因はなんだと思う?」
突然の問い。しかし、アシモフは相手に物怖じすることなく、冷静に言葉を紡ぐ。
「……想いの強さだと思います。勝利を掴みたいという想い、ではなくて。勝利というのは、あくまで結果としてついてくるものであって……本当に大切なのは、勝利の果てに手に入れたいもの……なのかなと」
名誉や成果に囚われていた以前のアシモフとは、まるで別人のようだ……。そんな風に思いながら、***はアシモフの背中を見守る。
「その手に入れたいものへの想いへの強さが、人の強さなのだと……占星魔法部として戦い続けて、俺はそう思うようになりました」
「……なるほど。では、参考までに聞かせてほしい。君が勝利の果てに手に入れたいものとは、一体なにかな?」
アシモフはステラの方に一度視線をやったあと、改めてミクリと向き合う。
「無我夢中で進んできたので、いざ言葉にしようとすると難しいです。けど、一つだけ確かなのは……俺は、これまで一緒に戦ってくれたステラと同じ景色が見たい。これからもステラと一緒に走っていきたい。あえて言うのなら、それが答えかもしれません」
「……?ア、アシモフ、それって、その……え、え?んんっ?」
赤面して動揺するステラ。すると、ミクリは手をあごにそえながら、子どものようにくつくつと笑った。
「満点越えの答えだ、アシモフ君。では、すまないが少しだけステラ君を借りていいかな。学園の頂上を賭けた一対一での戦い……ボクはこの瞬間が訪れるのをずっと心待ちにしていたんだ」
ミクリは楽しげな様子で剣を抜き、その切っ先をステラへと向ける。
「行って来い、ステラ。元々、君はこのために占星魔法部に入ったんだ。遠慮せず、思いっきりやってくればいい」
「……!う、うん!ありがとアシモフ!じゃ、ちょっと行ってくる」
ステラはゆっくりと戦いのステージへと上がり、ミクリと向かい合う。
「ミクリ先輩。剣道部にいた頃から、あなたとはずっと戦いたいと思っていました。そのためにずっと練習して……でも、途中で戦えなくなってしまって。けど、今はアシモフのくれた力があります。だから……あたし、この力であなたを倒してみせます!どうか、よろしくお願いします!」
「大歓迎だ、ステラ君。ボクもまた、君と戦うのをずっと待ち望んでいたからね。さぁ、では始めようか。占星魔法部と剣道部による、学園の頂上を賭けた戦いを」
頂上決戦を始める
エピローグ
激戦の末、同時に膝をついたステラとミクリ。しかし、ミクリはそのまま倒れ、ステラはなんとか立ち上がった。
「そこまで。占星魔法部と剣道部の段位戦……結果は、占星魔法部の勝利です」
ジャッジさんの宣言と同時に、周囲からは大きな拍手と喝采が上がる。
「お疲れ、ステラ。かっこよかったぜ」
「あ、あはは……。なんか、信じられないかも」
ステラはアシモフの手を握って立ち上がり、周囲の歓声に答えた。
「……ミクリ。平気か?」
剣道部部長のロベルトは、倒れたミクリにそっと手を差し伸べる。
「大丈夫だよ。けど、すまなかったねロベルト君。ボクのせいで剣道部は負けてしまった」
「……よいのだ、これで。負けたというのに、なぜか俺は清々しい気分でな。今はただ、這い上がろうという想いで胸が満たされている」
「あはは。奇遇だね、ボクも同じ気持ちだ。また一からやり直しかと思うと、ワクワクして仕方がなくてさ」
「そうか。ならば、その……なんだ。一からやり直すということならば、俺も……お前の隣を歩ませてはくれないか。いや、もちろん嫌なら結構なのだが」
不器用にそう言いながら、ロベルトはミクリから視線を背けた。すると、ミクリはロベルトの手を取り、ゆっくりと起き上がる。
「……ロベルト君、本当に変わったね。うん、いいよ。今の君と一緒なら、これからの学園生活も退屈せずに済みそうだ」
各々の選手を称え合い、占星魔法部と剣道部は改めて向き合う。そして、アシモフはロベルトに握手を求めた。
「ロベルト。俺はまだお前と決着をつけたわけじゃない。けど、挑戦ならいつでも受けて立つからな」
ロベルトは微笑を浮かべながら、アシモフの握手に応える。
「フン、減らず口を……。ボロが出ないうちに隠居でもすることだな」
「はっはっは。相変わらず面白いこと言うなぁロベルト。何なら今すぐやってやろうか?デカブツ」
「構わないが……勝利したばかりだというのに、大衆の前で恥をかくことになるぞ?チビ助」
はいはいストップ……とステラとミクリが止めに入るまで、アシモフとロベルトは互いの手を握り潰す勢いで握手を続けた。
――それから数日後の放課後。占星魔法部の部室の地学室には、いつもの風景があった。
「ステラ、見てくれ!これぜんぶ入部希望の書類だぜ!?まさかここまで知名度が上がるなんてなぁ」
「わっ、ほんとだすごい。でも、占星魔法って使うのに結構センスがいるでしょ?新入部員の子達、使えるのかな……?」
「そこはまかせてくれ。誰にでも使いやすいよう改良を重ねてある。というわけで、俺は部長として新入部員達の教育を」
「オッケー。じゃあ、その教育とやらはあたしが担当したげる。代わりに、アシモフは段位戦に参加してきて。剣道部に勝ってから毎日のように試合の申し込みが来てるんだから」
「……え?いや、でも試合はステラの方が確実だし。今後の活動のためにも俺は教育係に徹して」
「それじゃあアシモフ自身の修行にならないじゃん。あたし、アシモフと一緒にもっと強くなりたい。ほら、その……あたしも、アシモフと一緒に走っていきたいの。だから、追いついてきてよ」
……これまで一緒に戦ってくれたステラと同じ景色が見たい。これからもステラと一緒に走っていきたい。
自分で言った言葉を頭の中で反復し、アシモフは改めてステラと向き合う。
「……オーーケィオーケィ。他でもない君がそう言ってくれるのなら、一緒に突っ走ろうじゃないか。これからもずっと」
彼らがいる限り、この世界は大丈夫だろう……。
アシモフ達の戦いの軌跡を見届けた***は、また新たな世界へと旅立つのだった。
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