攻掠!ドラグァ大作戦_プロローグ
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story by 間宮桔梗
228:攻掠!ドラグァ大作戦 Mission1.偵察
開始前
プロローグ
「あら?あなた、カジノ側の人ではなさそうね」
フォーマルな衣装に身を包んだ乗船者の波の中で、***は一人の女性に声を掛けられる。
「なら、選考会を受けに乗船した参加者……というわけでもなさそうね。もしかして、密航者さんとか?」
どこか気品を漂わせる女性が口にした問いに、とりあえず***は現状を説明することにした。
「よくわからないけれど、偶然ここに来てしまった……ということかしら?ふぅん……なかなか面白い人ね、あなた」
彼女の話によると、この巨大船は魔界にある会員制の巨大カジノが所有しているものらしい。そして現在、この船では会員証を手に入れるための選考会が行われているようだ。
「私、お宝専門の回収屋稼業みたいなことをしているの。今回は依頼を受けて、とあるカジノにある最高級の景品を手に入れるのがお仕事なのだけれど……そのカジノに入るには、まずこのカジノ船で勝ち抜いて会員証を手に入れなければならないのよ」
そう言うと、彼女はやや眉をひそめながら、じっくりと***のことを観察する。
「ねぇ、あなた。よかったら私と組まない?あなた、なかなか修羅場をくぐっていそうだし。もし手助けをしてくれたら相応の報酬を渡すわ。どうかしら?」
……彼女の持つ不思議な空気に興味を覚えた***は提案を受け入れ、しばらく彼女と行動を共にすることにした。
「契約成立ね。私はリアネ。よろしく、密航者さん……と呼ぶとさすがに怪しまれるわね。かと言って、人のことを名前で呼ぶのはあまり好きじゃないし……。そうね、ひとまず旅人さんと呼ばせてもらうわ」
自己紹介を終えると、船中にアップテンポなファンファーレが響き渡った。その瞬間、百人を超える選考会の参加者達の目つきがガラリと変わる。
「始まったわね。フフ、安心して。職業柄、賭け事は結構得意なの。そうね、まずはスタッフの観察から始めましょう。タキシードを着ている人は責任者である可能性が高いって知ってる?特に今回のような選考会だと、責任者が参加者を直接品定めしている確率も高い。だから最初、は…………」
周囲を見渡すリアネの視線は、数メートルほど先にいる、メイドの姿をした一人の少女に向けられていた。
「ちょっと、依頼人のメイドさん。どうしてあなたまで船に乗っているのかしら?」
距離を詰めて声を掛けると、メイド姿の少女は虚ろげな瞳をこちらに向ける。
「……敵地の偵察。加えて、貴方の見張りのためです」
「私の見張り?何のために?もしかして、私が失敗するとでも思っているのかしら?」
「貴方の“回収屋”としての腕は疑っておりません。ですが、私が耳にした限りだと、貴方は一部の方々に賭博鬼、暴力女、凶暴娘……等と呼称されることがあるようですね。ミス・クラッシャー」
「…………。それらのウワサは全部、どこかの風聞好きが流した失礼極まりないウソにすぎないわ。まったく、麗しいレディに向かってクラッシャーだなんて……失礼しちゃうわね」
そう語るリアネのこめかみには、微妙に冷や汗が滲んでいた。
「それに、合格者は最大二名まで同伴者を指名できます。私は賭博事には自信がありませんが、私が参加すれば少しでもカジノへ入れる確率が……ミス・クラッシャー。なぜ逃げるのですか?」
***の手を引っ張り、メイド少女から逃げるようにして人混みの中へ入っていくリアネ。
「……あの子に見つめられると、なぜかわからないけど調子が狂うのよね。ゲームに支障が出ることもあり得るし、ひとまず彼女の見張りから逃れながらチップを稼ぎましょう。あと……ミス・クラッシャーのウワサはデマだから信じちゃダメよ?旅人さん」
ほんのりと頬を膨らませながらそう言い、リアネは***と共にカジノ船攻略へと乗り出すのだった。
……どこかぎこちない様子の二人を尻目に、***はゆっくりとその場をあとにしたのだった。
>>チップを稼ぐ<<
さあ、行きましょ。
張り切りすぎて船から落ちないようにね?
まずは500km、色々見て回ってみましょう。
え?私はこのぐらい余裕だけれど……。
これ、預っててもらっていいかしら?
私、あんまり物を持たない主義なのよね。
メイドリボンを1個手に入れました。
フフ……。腕が鳴るわね。
張り切りすぎて船から落ちないようにね?
まずは500km、色々見て回ってみましょう。
え?私はこのぐらい余裕だけれど……。
これ、預っててもらっていいかしら?
私、あんまり物を持たない主義なのよね。
メイドリボンを1個手に入れました。
フフ……。腕が鳴るわね。
チップを稼ぐ
エピローグ
「フフ。あなたと組んで正解だったわ、旅人さん。やっぱり私の目に狂いはなかったようね…………それで、あなたの成果はどうだったのかしら?依頼人のメイドさん」
***が振り返ると、そこにはリアネにお宝の回収を依頼した、先ほどのメイド少女がポツンと立っていた。
「……教える必要性を微塵も感じません。ミス・クラッシャー」
「あら。私の勝率を上げたいと言っていたのはメイドさんでしょう?一蓮托生の協力者として、報告はちゃあんとしてほしいのだけれど」
諧謔的な笑みを浮かべるリアネに、メイド少女は虚ろな瞳で上目遣いをしながら口を開く。
「全敗でしたが、何か?」
「くふっ」
「…………笑われるのは、とても不愉快なのですが?」
「ごめんなさい。視界の隅でウロウロ&オロオロしているのが見えていたものだから」
その言葉が癇に障ったのか、メイド少女はぷいっとリアネから視線をそらした。
「ぁ、えっと。き、規定以上のチップを稼いだ参加者の方々はこちらの最終選考会の会場へどうぞー!落選してしまった方々は、あちらのボートでお帰りくださーい!観戦を希望の方はあちらのカウンターで申請をー!」
期を同じくして、カジノのスタッフである水着バニーガールが参加者の誘導を始める。
「……さあ。お帰りの時間よ、メイドさん。大丈夫、依頼は必ず果たすわ。貴方も私の腕前は信用してくれているのでしょう?」
「…………。腕前に関してはその通りですが、貴方という個人を全面的に信用したわけではありません。よって、見張りは続行させて頂きます。ミス・クラッシャー」
「その名前で呼ばないでほしいのだけれど」
「では、ミスクラと」
「略してもダメよ……って、どこへ行くの?」
「観戦希望の申請をしてきます」
機械的にそう言うと、メイド少女は整然とした足取りで受付へと向かっていった。
「……私、彼女に疑われるようなことしたかしら?それとも、私に関する根も葉もないウワサをまだ信じているとか?どちらにせよ、ちょっと変わった子よね。と、そろそろ私達も行かないと」
確かに、あのメイド少女からはどこか異質なオーラのようなものを感じる……。***は少女のことを考えながらも、ひとまずリアネと共に最終選考会場へと向かうのだった。
229:攻掠!ドラグァ大作戦 Mission2.突破
プロローグ
「最終選考会場へようこそ!さて、ここまで勝ち抜いてきた参加者の方々が“持っている者”であることはもはや疑いようがありません。とはいえ、最後の最後に勝負を分けるのは、天運という名のチップを手に入れられるか否かにかかっています!」
快活な笑顔と泣きぼくろ。そして、女性らしい部分を豪快に強調したディーラー服が特徴の、若々しい女性の姿があった。
「“カジノの女王”たるルーレットは、それを確かめるのに最も適しているギャンブルといえるでしょう!ルールは第一選考会と同じく、規定以上のチップを稼ぐことです!女王の寵愛を手にしたい人は、どうぞチップを賭けてください!」
最終選考会に参加している参加者は、リアネと***を含めて十名ほど。規定以上のチップを稼げば何人でも合格できるルールではあるものの、求められるチップの枚数はかなり多い。おそらく勝ち抜けるのは一人か二人……。或いは、全員が敗北するかもしれない。
「さて、まずは彼女の性格を掴むことからね。指の動きと爪の削れ具合からして、一流のシューターであることは間違いなさそうだけれど……」
「……ミス・クラッシャー」
「って近くにいたのね、メイドさん……。あと何度も言っているけれど、その呼び方はやめてほしいわ」
「何やら色々考えているご様子ですが……ルーレットというのは、ボールが落ちる場所を当てるのが目的です。となれば、完全に運否天賦で決まるものだと思うのですが」
「そんな単純なものではないわ。ルーレットの賭け方には色々テクニックがあるの。まずはインサイドを狙うかアウトサイドを狙うか、そこからメリットやデメリットを考慮して細かい配当を決める……。必勝法はないけれど、攻略法は山ほどあるのがルーレットの面白いところよ」
「…………。難しそうなのですが」
「ええ、難しいわ。いくら攻略法をたくさん知っていたとしても、状況を把握する力と、状況に合わせて使い分けるセンスがなければ、あっという間にすかんぴん。それに、プロのルーレットディーラーはある程度であれば狙った場所に玉を落とすことが……ってメイドさん、聞いてる?」
メイド少女の視線はリアネ……ではなく、ルーレットのディーラーへと向けられていた。
「あのディーラーには、ほとんど“負の感情の色”といったものが感じられません。あるのは濃厚な好奇心……。彼女が求めているのは刺激と感動だけ。イカサマは絶対にしない、はず」
「……?どうしてそんなことがあなたにわかるの?」
「それは……話してはならないと亡くなったマスターに言われたので、言えませんが」
「ふぅん、そう。やっぱりあなたって……」
何かを言いかけたが、リアネは自然と口をつぐんだ。
「……参考にするわ、メイドさん。さぁ、そうと決まれば始めましょうか。旅人さん、準備はいいかしら?」
うっすらと意味深な笑みを浮かべながら、リアネは***と共にゲームに挑むのだった……。
>>ゲームに挑む<<
フフ。位置登録をこまめにする人、好きよ。
甲板でルーレット勝負だなんて、なかなかロマンチックよね。
熟練のディーラーのようね。フフ、相手にとって不足はないわ。
コンビネーションが大事なのよ。何事もね。
普段は一人で行動することが多いけど、仲間がいるのはいいことね。
ツキは必ず回ってくるものよ。必ず、ね。
攻め時と判断した時は一気に行きましょう!
さあ、楽しみながら本気で挑むとしましょうか。<ゲームに挑む>!!
エピローグ
リアネの勝利をもって、カジノ船の選考会は大盛況と共に幕を閉じた。周囲が落ち着いたあと、ルーレットのディーラーは満足げな笑顔を浮かべながらリアネに声を掛ける。
「ミス・デナルディ。まさか、あの場でマーチンゲールでくるとは思いませんでした。しかも大逆転するなんて……率直に言って、私好みの最高のギャンブルでした!」
「フフ、そう言ってもらえると嬉しいわ」
一流のシューターは、ある程度であれば狙った場所に玉を落とすことができる。ゲームの中で相手の投げ方の癖や好む型を探り出したリアネは、それに合わせて的確なベットを行うことで勝利を手にした。
……とはいえ、リアネが相手の癖をいち早く見抜けたのは、ゲーム開始前にメイド少女から与えられた、ディーラーの性格の情報が活きたからでもあった。
「いつかまた、一緒に遊びましょうね」
思考に耽りながらも笑顔を繕い、リアネはディーラーと握手を交わす。そして、水着バニーガールからマティーニが入ったグラスを二脚受け取り、***のいる甲板テラスへと戻って来た。
「さて。選考試験を突破した人は、同伴者を二人まで指名できるのよね……。ねぇ、旅人さん。よかったら一緒に来てくれないかしら?ここまで一緒に戦ってきてわかったのだけれど、あなたとはとても相性が良いみたい」
***はリアネからグラスを受け取り、乾杯をすることで了承の意を示す。
「フフ、ありがとう。それと……あなたも来たいんでしょう?メイドさん」
いつのまにか***の背後に亡霊のように佇んでいたメイド少女に、リアネは透き通った声で話しかける。
「……先ほどまでは、私を連れて行くことに気が乗らない様子でしたが。どういう風の吹き回しですか?」
「気紛れなだけ。だから、私の気が変わらないうちに首を縦に振った方がいいわよ?メイドさん」
メイド少女は***とリアネをゆっくりと交互に見つめたあと……
「…………コゼットと申します。以後、お見知り置きを」
改めて***に視線を戻し、傀儡を彷彿とさせる動きで丁寧に頭を下げた。
「フフ。それじゃあ自己紹介も済んだことだし……ねえ、船がカジノに着くまでまだ時間があるみたいだし、皆で船内のレストランにでも行かない?乗船者はタダで食べれるのよ、タダで!!」
……こうして***とリアネとコゼットは、豪華客船で束の間の休息を楽しんだのだった。
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