心想ワスレナグサ_プロローグ
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222:心想ワスレナグサ 序ノ噺
開始前
少女との出会い……!
プロローグ
「……ひっ!?だ、誰……?」
澄んだ空気の香りと、ほんの少しの肌寒さを感じていると、***は稽古用の薙刀を携えた、小柄でおとなしそうな少女に声を掛けられる。
「怖い人……じゃ、なさそう。も、もしかして、あなたも空を飛ぶ折り鶴に案内されてここに……?」
なんでも、彼女は部屋で引っ越しの準備をしていたところ、窓の外に一羽の折り鶴が飛んでいたのを見つけたのだという。そして、折り鶴は不思議な力で彼女の頭の中に直接声を掛け、こう言ったらしい。
「『置き去りにした大切なモノが君を呼んでいる』って。何のことかわからなかったんだけど、その言葉が自分にとって大切なコトのように思えて。だから私、飛び立った折り鶴を追ってこの山に来たん、だけど。えと……」
よく見ると、少女の肩と足は小刻みに震えていた。
「……この地域って、妖怪が出ることでちょっぴり有名な町で。私は見たことないけど、人間と妖怪が手を取り合っていたっていう記録があったり、神社の守神が妖狐だったりして。だから、あの折り鶴も妖怪なんじゃないかって途中で思い始めて。そしたら、その……」
……足がすくんで動けなくなってしまった、とのことらしい。
「で、でも、あのね。やっぱり折り鶴の言っていたことが気になって。何度も引き返そうと思ったけど、引き返す気になれなくて。おばあちゃんには友達の家に泊まるって書き置きしておいたし、気持ちとしてはこのまま進みたくて。だから、あの……い、一緒に来てくれると、嬉しい……かも」
おずおずといった様子で、少女は***の瞳を見据える。その目を見た瞬間、***は彼女が何か大きな宿命を背負っていることを直観的に察し、ひとまず彼女と共に行動することを選んだ。
「あ、ありがとう。私、こう見えて人を見る目にはほんの少しだけ自信あって。あなたのことはなんだか信頼できる気が……あ、自己紹介。えっと、ミハシココノ。ココノで、いい」
ココノは護身用として持ってきた稽古用の薙刀を両手で真横に持ちながら、ぺこりと頭を下げる。
「……あ、そだ。これ、山の中で拾った物で。何かの装飾品だと思うんだけど、山を下りたら交番に届けようと思ってて。でも、私だと失くしちゃいそうだから、あなたに持っててほしい」
***はココノから、どこか見覚えのある綺麗な装飾品を受け取った。
「えと、じゃあ……改めてよろしく。折り鶴は確か、あっちに飛んで行ったと思う」
こうして、***はココノと共に、折り鶴を追って山の奥へと向かうことになった。しかし……。
「……あの女の子、どこへ行くのでしょうか?この先は確か霊道へと通じていたような気が。それに、もう一人のお方はどこかでお会いしたことがあるような……?」
そんな二人の様子を、少し離れた場所にある大木の上から伺う妖狐がいた。
「ど、どうしましょう。兄さんを呼んだ方が……い、いやいや!ここで兄さんを頼ってしまったら家出した意味がなくなってしまいます!ここは一人で事を解決して、私を未熟者呼ばわりした兄さんを見返さないと……!」
妖狐の少女は決意と共に小さな両手をぎゅっと握りしめる。そして、こっそりとココノと***を追いかけることにしたのだった……。
>>折り鶴を追いかける<<
準備、大丈夫?
じゃあ、そろそろ……。
まずは軽く500里ぐらい……えっ、500里?
これ、持っててほしい。 あなたが持っていた方が安全……な、気がする。
妖狐の耳飾りを1個手に入れました。
行こっか。
ちょっぴり不安だけど、少しずつ前に……。
じゃあ、そろそろ……。
まずは軽く500里ぐらい……えっ、500里?
これ、持っててほしい。 あなたが持っていた方が安全……な、気がする。
妖狐の耳飾りを1個手に入れました。
行こっか。
ちょっぴり不安だけど、少しずつ前に……。
折り鶴を追いかける
エピローグ
「ちゃんとついてきてくれたようだね。よかった」
そして洞窟の前には、羽ばたく折り鶴達に囲まれた中性的な顔立ちの青年の姿……。
「それじゃあ、あとはキミに……いいや、キミ達にまかせるとしよう。この先のこと、頼んだよ」
ココノと***にそう語りかけると、青年はその体に何羽もの折り鶴を纏い、風と共に姿を消してしまった。
「き、消えっ!?や、やっぱり今のって妖怪……?けど、折り鶴を持ってたってことは、ここまで私を導いたのはあの人ってこと……?」
未知の存在に動揺しながら、ココノは目の前にある洞窟の入り口を見つめる。
「……この先。何か感じる。なんだか……呼ばれている、気が……する」
すると、ココノは操られた人形のようにゆっくりと足を動かし始め、洞窟の中へと足を踏みしめる。しかし、次の瞬間……。
「わあああっ!ま、待ってください御二方!この洞窟は妖の一種である“つくも”が住む異界へと繋がる霊道です!人間さんにとっては大変危険な場所なんですっ!」
鈴の音のような声と共に現れたのは、ココノと***をずっと尾けていた妖狐の少女。
「なので、すぐに山を下りましょう!私もご同伴しま……」
……次の瞬間。***と妖狐の少女の目がピタリと合った。
「はッ!?や、やっぱり***さんだったんですね!わぁ、お久しぶりです!私です、カサネです!覚えていますか!?そうだ、リッカさんがずっとあなたに会いたがっていて」
「ひあっ……!?」
三つ尾を大きく振りながら笑顔で近づいてくる妖狐に恐怖を覚えたのか、怖がりのココノは***の手を掴み、全力疾走で洞窟の中へと入っていく。
「ほえ……?わっ、ちち、違いますって!私、怖い妖怪じゃないですっ!この町の守神の元で修行をしている身の……」
「や、やっぱり妖怪……!む、無理。怖いの無理。追ってくるのとかもっと無理……や、やだ、まだ追ってきてる!?とと、とにかく逃げないと……!」
***はカサネが味方であることをココノに伝える……が、逃げるのに必死で耳に入っていないようだ。
「お、お待ちを!先ほど言ったようにその先は危険で……わーん、待ってくださいよぉ!」
……こうして、ココノと***を追いかける形で、困り顔のカサネも洞窟の中へと入っていくのだった。
223:心想ワスレナグサ 破ノ噺
プロローグ
なぜかぼんやりと明るい洞窟。その奥で待っていたのは、人の形を為していながらも人ならざる気配を持つ少女。彼女の手には、武器と思われる長い鎖が握られている。
「ま、また妖怪?でも、なんだかさっきの狐の子とは少し違うような気もする、けど……」
戸惑いの言葉を口にするココノ。すると、ココノとかいちょに追いついたカサネが息を切らしながら声を絞り出す。
「はぁ、はぁ……。え、えっとですね。厳密に言うと、彼女は妖怪ではなく“つくも”という、幻妖の一種でして……」
……が、ココノはまだカサネのことを怖がっているらしく、***の後ろに隠れてしまう。
「うぅ。そこまで怖がられてしまうと、ちょっぴり落ち込んじゃいます……」
そんな三人の様子を遠目で眺めながら、鎖を持ったつくもは退屈そうに溜息を吐く。
「人間二人に妖怪一人……奇妙な連中さね。ま、なんでもよし。ここはね、人間界と“つくも界”とを繋ぐ中間地点。そして、私は“ソデグサリ”として、つくも界の入り口を守る義務を持っているの。同胞以外の存在を追い返す番人、と言い換えてもらってもいいわ」
そう言うと、ソデグサリは長い鎖を両手に持った。
「三回まで警告する。立ち去りなさいな、奇妙なご一行様。ここは人間や妖怪が足を踏み入れていい領域じゃない。痛い目に遭いたくなければ、回れ右して直進歩行しなさい」
「ま、待って。私、折り鶴を操る人に導かれてここまでやって来て。あの人が、そのつくもっていう存在なのだとしとら、私はこの先に進む許可を貰ったってことになる……と、思うんだけど」
「折り鶴?この辺にいる同胞の顔はみんな把握してるけど、そんなヤツは見たことないわ。はい、警告二回目。あと一回で武力行使に出るから、言葉には気をつけなさいな」
気迫に押され、ココノは一歩だけ後ずさる。
「あ、あの。彼女の言う通り、ここは引き下がった方がいいと思います。つくもという存在は、その多くが人間に捨てられた物の成れの果てなんです。だから、人間に対して容赦のない方々が多くて……」
「……ッ!捨てられた、物……」
何か思い当たる節があったのか、ココノはカサネの言葉に大きく瞳を見開く。
「……捨てた。私、すごく……大切な何かを……でも、思い出せない……思い出せないから……私は……ここに呼ばれ、た……?」
すると、ココノは稽古用の薙刀を持ったまま、ふらふらとソデグサリの方へと歩みを進める。
「……三度目の警告。それ以上近づくと本当に当てるから、よく考えた方がいいさね」
「通して。私は、どうしてもこの先に行かなきゃいけない」
「はい、警告終了。じゃ、遠慮なく武力行使で行くわよ」
次の瞬間。ソデグサリの放った鋭利な鎖の先端が、ココノの膝元を目がけて放たれた。
「あ、危ない!!」
箒を片手にココノを庇おうとするカサネ。が、ギリギリ間に合わず、鎖はココノに命中…………することはなかった。
「……ふぅん。今まで色んなエモノを持った相手と交えてきたけど、そういえば薙刀を相手にするのは初めてね」
パシン、という音がしたかと思うと、鎖の先端は地面に落下していた。どうやら、ココノが薙刀を使って払い落としたようだ。
「おもしろいわ。その棒切れでどこまでやれるか見せてみなさいな、人間!」
「…………。二人とも下がってて。危ないから」
先ほどまでとは別人のようなココノの雰囲気に驚きを感じながらも、***とカサネはひとまずココノのフォローに回ることにするのだった。
>>突破開始<<
位置登録?スマホ持ってないから、任せてもいい……?
地元では有名な山だけど、入ったのは初めてで……。
……邪魔するなら、力ずくで通る。
薙刀も、一人じゃ強くなれないから……。
協力できる人がいるのは、いいことだと……思う。
……掴んでみせる。絶好の機会。
もう、止まりたくないから。
……立ち止まっていられない。
今は、行けるところまで行くだけ……!
今は、行けるところまで行くだけ……!
<突破開始>!!
エピローグ
鎌倉時代から歩兵の武器として使われてきたが、集団戦に向いていないことや、その独特の使い勝手から徐々に衰退……。
戦国時代には槍や刀が主流となったことで戦場から姿を消したが、江戸時代頃からは家中の女性が護身術として用いる“女子の武術”として発展した、という歴史を持つ。
「……っ。鎖の軌道が、ぜんぶ……読まれてるっていうの?」
薙刀というのは、力で振るってもその真価を発揮することはできない。
そのため、腕力や筋力といった“男子の持つ力”がほとんど活かされず、むしろ枷にすらなってしまう。ゆえに、薙刀は男子ではなく女子の武器として古くから親しまれてきた。
「な、なんでこっちの攻撃がいとも簡単に払われるのよ。あなた、薙刀の達人か何か……?」
一説では、薙刀は攻防の面において遠距離・中距離・近距離に対応できる最強の近接武器と言われており……
「くっ、何よその鋭利な目つきは。調子に乗るな、人間…………あっ!」
……極めさえすれば、一対一の戦いにおいて薙刀に勝る武器は存在しないともいわれている。
「……ッ、わかった。悔しいけどこっちの負けさね。それに、キミは邪な人間というわけでもなさそう。命の保証がいらないってことなら先に進むといいわ。一応、通る許可は持ってるってことだしね」
壁際に追いつめられ、武器を弾き落とされ、首筋に薙刀の先端をつきつけられたソデグサリは自らの完敗を認め、やれやれといった様子で道を開けてくれた。
「かっか、かか、かっ…………カッコイイ!!」
カサネは尻尾を大きく振り、目をキラキラさせながら一戦を終えたココノの元へ近寄る。ココノは一瞬だけ逃げるような所作をしたが、なんとか踏み止まる。
「あ、あのっ!ココノさんでしたよね。その、私にも薙刀というのを教えて頂けないでしょうか!?ひとまず、この愛用の箒を薙刀の代わりにしますので!私、強くなって兄さんを見返したくて!」
「……え?あ、えっと。時間がある時でいいなら、いいけど。そんなことより、さっきは……あ、ありがと」
不器用な口調でカサネに礼を言うココノ。しかし、当のカサネはポカンとした様子だ。
「あ、あの。私、何かしましたっけ?」
「……最初、庇おうとしてくれた。私のこと」
「そ、それは当然です。私、人間を守る役割を担っている妖怪ですし。けど、あなたほどの強さがあるなら私の加勢なんて必要ありませんでしたね。あはは……」
「ううん。気持ち、すごい嬉しかった。その……今まで怖がっちゃってて、ごめん」
どうやら、ココノはカサネのことを“善良な妖怪”として受け入れたようだ。そして、ココノはどうしてもこの先にある“つくも界”に行きたいという旨をカサネに伝える。
「わかりましたっ。では、私もご同伴させてください!本当はすぐにでもあなたを安全なところまで連れていきたいのですが、その様子だと何か事情があるようですし……」
カサネは妖などの存在について詳しい。彼女がついてきてくれるなら、この先の道中の安全度はグッと跳ね上がるだろう……と、そっとココノに伝えるかいちょ。
「わ、わかった。じゃあ、よろしく……カサネ、さん」
「はい、よろしくお願いします!あ、私のことは気軽にカサネとお呼びください、お師匠様!」
「え。お、お師匠様って、私のコト……?」
こうして、ココノとカサネと***の三人は洞窟の奥へと進み、つくも達の住む世界へと足を踏み入れることになった……。
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