深霧街の錬金術士_プロローグ
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story by 間宮桔梗
190:深霧街の錬金術士 -彷徨のRUBER-
開始前
彼の目的とは……?
プロローグ
「んっ……ちょっと甘くしすぎたかな?でもマスター、甘いくらいが丁度いいって言ってたし……とはいえ、シチューに角砂糖ってさすがにどうなのかしら?」
薄暗いキッチンで作ったシチューを味見しながら、アキナはブツブツと小言をつぶやく。
「だいたい、舌といい言動といい、マスターは子どもすぎるのよ。いい歳なんだから、もう少し、こう……ねぇ?」
やれやれ……と大きな溜息を吐きながら、アキナは鍋を抱えてリビングへと向かう。
「マスター、ランチできましたよー。ご注文通り、一昨日よりも甘めに……って、あれ?マスター?」
『ドジな家政婦へ。娘を捜してくる。危険だからお前は工房に引きこもっていろヌハハハ。天才錬金術士マグヌス様より』
……テーブルに置いてあったメモには、汚い字でそう書かれていた。
「あんのバカ錬金術士……そもそも私は家政婦じゃなくて、あんたの弟子だっての……ッ!!」
一方、その頃……(プレイヤー名)は深い霧が漂う閑散とした街に訪れていた。
「遅いぞシャロル、なにをしていた!?約束の時間はとっくに過ぎているではないかっ!」
突然、(プレイヤー名)は科学者のような男に声を掛けられる。
「まったく、天才錬金術士であるこのマグヌス様を待たせるとは。俺様の時間を無駄に浪費させることは、文明の進歩が遅れることに等しいのだぞ!?」
どうやら彼は、(プレイヤー名)を他の誰かと勘違いしているようだ。すぐに人違いだと説明するが……。
「さあ、行方不明となった愛しき我が娘を捜しに行くぞ。集団失踪やら殺人鬼の出没やらで、深霧街はただでさえ物騒なのだ……しかし、限りなく完璧に近い俺様の英才思考と貴様の水平思考があればノープロブレムだ!ヌハハハ!」
……残念ながら、なにを言っても無駄なようだ。とはいえ他にアテもないため、(プレイヤー名)はこのマグヌスという男の“娘捜し”に付き合う形で、深霧街を闊歩することになった。
「……む?シャロルよ、武器は持っていないのか?ではこれを使え。うちの家政婦愛用のリーサルウェポンだ。こんなこともあろうかと、工房を出る時に持ち出して来たのだ」
(プレイヤー名)はマグヌスから、一本のハタキを手渡される。
「よし、行くぞシャロル!秀才にして英才にして天才であるこのマグヌス様についてくるがいい!」
>>街へ繰り出す<<
では、行くとしよう。
この天才の傍から離れるなよ?
まずは500kmほど走るか。面倒だが、やるしかあるまい?
そうだ、こいつを持っておけ。
いざという時に役に立つかもしれん。
万能ハタキを1個手に入れました。
準備は申し分ないな。よし、行くぞ!
街へ繰り出す
エピローグ
「えっへへ~やっと追い詰めたよ~♪ね、あなたのお肉……斬ってもいいよね?」
突然現れた殺人鬼の巧みな誘導によって、(プレイヤー名)とマグヌスは路地裏に追い込まれてしまった。
「バカめ、追い詰めたのはこちらの方だ。クックック……その目に焼き付けるがいい。今朝がた錬成したばかりのとっておきの錬金薬『マグヌスポーション1031(テンサイ)号』の威力をな!」
マグヌスが薬ビンを投げようとした、その瞬間……一人の女が建物の上から飛び降りると同時に、殺人鬼の頭部にあて身をくらわせた。突然の不意打ちに、殺人鬼は為す術もなく地面に倒れる。
「まったく。なにをしているかと思えば、やっぱり危険な目に遭ってるし……マスターにもしものことがあったら、誰が私に錬金術を教えてくれるんですかっ」
「む、アキナか。工房に引きこもっていろと言ったはずだが?ははーん、さてはこの天才の活躍を見たくて来てしまったか……っておい、なにをする!?返せ!俺様のマグヌスポーション1031号を返せ!」
「没・収・です!こんな危ないもの。どうせこの辺一帯が消し飛ぶ爆薬かなにかなんでしょう?」
「そんな危険なもの錬成しておらんわ。せいぜい俺様を中心にドーナツ状の魔学エクスプロージョンが起こるぐらいだ。つまり俺様とシャロルにはなんの被害もない。実に安全極まりない」
「それを危険って言うんですっ。ていうかその人誰ですか!?全然シャロルさんじゃないじゃないですか!」
「ああん?なにを言っているのだ。どこからどう見ても顧問探偵シャロルに相違な……」
まじまじと(プレイヤー名)を見つめたあと、マグヌスは叫んだ。
「うおおっ、誰だ貴様は!?」
改めて(プレイヤー名)はマグヌスに名を名乗るが……期を同じくして、ゆらりと殺人鬼が立ち上がった。
「ぃたた、コブできちゃった……うーん、お姉さんすごいねー。あの銀髪の女の子といい、今日はやたらと変わった女の子に遭遇するなぁ」
「……む。銀髪の女の子だと?おい殺人鬼、詳しく聞かせろ!」
マグヌスの必死な様子とは反対に、殺人鬼の少女はあっけらかんとした様子で答える。
なんでも彼女は街を徘徊している最中、一人で裏道を歩いていた黒い服の銀髪少女を見かけたらしい。
「あ、ちなみにその子は襲ってないよ。リッパーはねー、子どもは襲わない主義なんだー。えへへっ」
「おおそうか。いいやつだなお前。ゼリービーンズ食うか?」
「いやいや……殺人鬼ですから、この子」
気になったので追いかけてみたところ、銀髪少女は一人の魔術師風の女につれられ、北西にある廃工場に入っていき……姿を消したのだという。
「北東の廃工場……あそこは確か、錬金術協会の地下研究所への入り口の一つだったな。となると、やはり協会の倒錯者どもが我が娘を連れ去りやがったか。ま、予想はついていたがな」
「……あの。前から思っていたんですけど、自分で創った人造人間(ホムンクルス)のことを娘って呼ぶの、やめませんか?なんだか聞いていて悲しくなるというか……」
「ええぃうるさい。とにかく俺様は研究所に乗り込む。危ないからお前は工房に戻っていろ」
「イーヤーでーす。私もマスターについていきますからねっ。放っておくとなにするかわかったもんじゃないんだから……」
「……フン、好きにするがいい。おい、殺人鬼。情報提供に感謝する。お礼にゼリービーンズと、このマグヌスポーション184(イヤシ)号をやろう。その程度のコブなら一瞬で治るぞ。ヌハハ」
「本当!?わーい、ありがと!じゃあ、リッパーも今日は見逃してあげる~♪」
殺人鬼はマグヌスからのお礼の品を受け取ると、鼻歌を口ずさみながら満足げに路地裏へと消えていった。
「それと、(プレイヤー名)だったか。どうやら深霧街に来るのは初めてとみえる。ならば俺様についてくるがいい。深霧街は危険極まりない街だが、この天才錬金術士の傍にいれば安全だからな」
こうして、(プレイヤー名)は自称天才錬金術士マグヌスの旅に同行することになった。
「よし。そうと決まれば、錬金術協会のアホどもから娘を取り戻しに行こうではないか!ヌハハハ!」
深霧街の錬金術士 -彷徨のRUBER-完
さらわれた少女を
取り戻せるのか!?
取り戻せるのか!?
story by 間宮桔梗
191:深霧街の錬金術士 -人造のANIMA-
開始前
刺客を突破しよう
プロローグ
マグヌス達は奪われたホムンクルスの少女を取り戻すため、錬金術協会が管理する地下研究所に続く入り口へと向かっていた。
「そこまでです。殺菌されたくなければ、今すぐ引き返しなさい……と、私は警告します」
しかし、一人のナース風の女性に行く手を阻まれてしまう。
「ほほ~う。そのくすんだ義眼の色……協会で創られた改造人間のようだな。製作者はネコラかリザンヌ辺りか?」
マグヌスの問いに、ナース風の女性は顔色一つ変えずに答える。
「なるほど。こちら側の事情を知っていると。ならば、なおのこと通すわけにはいかない……と、私は判断します」
「お前の意見など聞いとらん。いいからそこをどけ」
「私の仕事はここに訪れた者を診察し、施設へ入場するに相応しい来客かどうかを判断すること。貴方達が無害であるならば、通してあげましょう……と、私は提案します」
「ならば問題ない。俺様ほど無害な人間はこの深霧街にはおらんからな」
どの口がそれを言うんですか……と、マグヌスの隣にいるアキナが冷静にツッコミを入れる。
「今からいくつか問診をします。先に言っておきますが、私の耳は貴方の心拍数を正確に測ることができます。正直に答えた方が身のためです……と、私は警告します」
「ピーチクパーチクうるさいヤツだな。ほれ、さっさと始めんか」
すると、ナース風の女性は一枚の紙をポケットから取り出す。
「質問その一。今日の体調は?」
「なんだ、意外と普通だな。あー、すこぶる健康だぞ。天才的といってもいいぐらいだ。ヌハハ」
「質問そのニ。女性の体で好きな部位は?」
「あえて言うのなら胸……いや、待て。これは問診と関係があるのか?」
よしっ……と、なぜかガッツポーズをするアキナ。
「質問その三。プロポーズの言葉は?」
「君は俺という乾いた大地に咲いた幾何学的なサンフラワー……っておい、なぜそんなことを貴様に言わねばならんのだ!?」
ききき既婚者だったんですかマスター!?と、アキナが驚愕の声を上げる。
「質問その四。貴方は……誰も成しえたことのない、ホムンクルスの創造に成功した錬金術士ですか?」
……瞬間。マグヌスの目の色が変わった。
「逆に聞こう。お前達は俺様の錬成したホムンクルスを奪って、なにを企んでいるのだ?」
「それは私の与り知らないことです。では、最後の質問……ホムンクルスは返さない、と言ったら?」
「アホか。そんなもん、奪い返すに決まっているだろう。ビゼは俺の娘だからな」
マグヌスが即答した瞬間、ナース風の女性は機械仕掛けの剣を構えた。
「私はベネフィ。リザンヌ様の崇高な研究によって生き永らえた改造人間。貴方達を協会を汚すバイ菌と認識。これより殺菌を開始する……と、私は戦闘態勢に入ります」
「フン、結局力ずくか。いいだろう……この天才にケンカを売ったことを一生後悔させてやる!ヌハハハ!」
>>後悔させる<<
位置登録をしていけば、貴様も天才になれるかもしれんぞ?
深霧街はとにかく危険だ。くれぐれも道に迷うなよ?
娘は取り戻す!この天才がな!ヌハハハ!
塵も積もればなんとやら、というからな。
非天才ども!俺様の背中に続けぇい!ヌハハ!
天才はチャンスを確実に物にする!覚えておけ!
天才が通るぞー。道を開けろ凡人どもー。
ヌハハハ!!
後悔させる!!
エピローグ
「ヌハハハ!この正義の天才に刃向ったのが運の尽きだったのだ!おマヌケなヴァカめ!」
「正義を名乗るのなら、もう少しそれらしいセリフを言ってください、マスター……」
アキナの叱責を受けながらも、ベネフィを無力化したマグヌス達は地下研究所の入り口のある場所へと辿り着く。
「ウフフ……いやねぇ。もうこの場所を嗅ぎ付けるなんて……相変わらず野良犬並の嗅覚ね、マグヌス」
「……!この声、メルークか!?」
そこには、マグヌスの名を呼ぶメルークという魔術師の姿。そして、その傍らには……
「……!ビ、ビゼ!?」
マグヌスが創ったというホムンクルスの少女、ビゼが立っていた。
「悪いけど、この子は会長の元へ連れていくわ。その方が彼女も……いいえ、私たち人類が皆、幸せになれるのだから……フフフ」
「ま、待て!ビゼを返せ、メルーク!」
メルークが地面の魔法陣を起動させると、二人は大きな泡に包まれる。音をたてて泡が割れた時には、メルークとビゼの姿はもう、そこにはなかった。
「ええぃ、くそ!あんな凡人術士に俺様が遅れを取るとは……くそ、くそッ!」
「マ、マスター!落ち着いてくださいっ!はい、ゼリービーンズ、ゼリービーンズです!」
何度も壁を殴りつけるマグヌスを、アキナと(プレイヤー名)が必死に止める。
「…………すまん、取り乱したな。もう大丈夫だ」
「もう、驚かさないでくださいよ……でも、ちょっと意外です。マスターも、あそこまで感情的になることがあるんですねぇ」
「う、うるさい。さっきのは忘れろっ」
マグヌスは耳先を紅くしながら、小悪魔めいた笑みを浮かべるアキナから視線をそらす。
「とにかくだ。俺様はビゼを……娘を連れ戻しに研究所に乗り込む。危険だから、お前達は」
「言っておきますけど、戻るつもりはありませんからね。それに、私も顔を知られてしまいました。どこにいたって危険なことに変わりはありません」
(プレイヤー名)もまた、状況はアキナと同じ。ならば、ここで散り散りになるのは得策ではない。
「だから、連れ戻しに行きましょう。ビゼちゃんを」
「…………フ、フン。本当は俺様一人でも十分なのだが、まぁいい」
アキナと(プレイヤー名)の決意を見て、マグヌスもようやく腹を括ったようだ。
「どうしても一緒に来たいというのであれば断る理由はない。せいぜいこの天才の勇姿をしっかりと脳裏に焼き付けることだ!ヌハハハ!」
すっかりいつもの調子に戻ったマグヌスを見て、アキナと(プレイヤー名)は互いに顔を見合わせ、やれやれと安堵のため息をつくのだった……。
深霧街の錬金術士 -人造のANIMA-完
研究所へ潜入!
ビゼを取り戻せるのか!?
ビゼを取り戻せるのか!?
story by 間宮桔梗
192:深霧街の錬金術士 -奪還のELIXIR-
開始前
果たしてビゼを奪還できるのか?
プロローグ
かつて協会員であったマグヌスに案内されながら、(プレイヤー名)達は地下研究所を進んで行く。
「フン、相変わらず辛気臭い場所だ。息を吸うだけで吐き気がする」
「……そういえば、マスターって元々は協会員だったんですよね?どうして脱退してしまったんです?」
「協会での研究はなにかと制約が多くてな。ここにいては、俺様がやりたかったホムンクルスの錬成実験ができなかったのだ」
そもそも、なぜホムンクルスを錬成しようとしたのか?アキナが問いかけようとした、その時……
「ぬおおおおおおおおっ!?」
人けのない広間にぽつんと立っていた一人の少女を視界に入れたマグヌスが、大きな奇声を上げる。
「ひっ!?な、なに……?あなた達、誰……?」
怯える少女――その体は、見るからに異質な姿形をしていた。
「ここまで完成度の高い合成獣(キメラ)は見たことがない……ああ、なんと美しい融合率!それでいて美しいフォルム!」
マグヌスのその言葉を耳にした瞬間、キメラの少女は物憂げに俯く。
「……そんなお世辞、いらない」
拳をぎゅっと握りしめ、少女は叫ぶ。
「こんな気持ち悪い体が、美しいわけない……怖い人達につれて来られて、気が付いたらこんな体にされて……」
「気持ち悪い体だと……?とんでもない!君の体は未知の可能性を秘めているのだぞ?」
「そんな可能性なんていらない!私は……私は、普通の人間でいたかったのに……!」
涙を流しながら自身を卑下する少女を見て……マグヌスは、不敵な笑みを浮かべた。
「いいだろう。では、君がいかに素晴らしい存在であるかを、このマグヌスが証明してみせよう。天才錬金術士の誇りにかけてな……!」
証明する
ランキングに関係なく、一定数の【錬金メダル】を集めると役立つアイテムが貰えるぞ。
ヌハハハ!かかってくるがいい!
アイテムショップで手に入る「アレスの鍛錬書」を使えば、すぐにLv80になれるぞ。実に興味深い書物だ。
「土地力」と錬金術は切っても切り離せない関係にある。なんなら、その歴史を語ってやってもいいぞ?
共同研究か。非常にエクセレントな着想だ。ヌハハ!
「凡人は自ら限界を定めるが、天才はそもそも限界を知らない」という俺様の名言を知らんのか?
強い敵を倒せば多くの【錬金メダル】が貰えるぞ。
敵の情報は、他のプレイヤー達がイベント掲示板で教えてくれるようだ。
天才を目指すのであれば常にチェックしておけ。
イベント掲示板をみる
クエストだとぉ?
フン、この天才の腕をもってすれば容易く乗り越えられるだろう。
奪還しに行く
過去抹消バトル
「ど、どうしてそんなに私に構うの……?私、こんなに気持ち悪い体なのに」
「なにを言うか。人間ベースのキメラの成功例は他にない。お前には素ん晴らしい価値があるのだぞ」
「で、でもっ。こんな姿で外に出たら、皆からバカにされて……」
「天才である俺様にはお前の価値がわかる。非天才のバカどもはお前の体をバカにするかもしれんが、そんなバカどもは放っておけ。バカの相手などしなくていいのだ」
マグヌスの言葉に、少女の警戒心はゆっくりと解けていった。
「……私、あなた達についていっても、いい?行くところ、他になくて……」
「ヌハハハ!大歓迎だ、美しいキメラよ!して、名前はなんというのだ?」
「孤児だった時に名前はなかったから……12号で、いい」
話によると、12号は深霧街にいたところを謎の集団に捕えられ、ここへ連れて来られたのだという。
「他にも、身寄りのない住民が何人も連れ去られてた。子どもから大人まで、たくさんの人が……」
それを聞いた瞬間、アキナは一つの可能性に行き当たる。
「あの、マスター。深霧街では謎の失踪事件が相次いでいましたよね?もしかして……」
「可能性はあるな。捕えた住民を使って、ここの連中はなにかよからぬ計画を企んでいるのかもしれん」
「そ、それってもう、完全に人体実験じゃないですかっ。協会がそんなことを行っているなんて、信じられない……」
マグヌスは顎に手をそえながら、思考を巡らせる。
「とはいえ、会長のティファレトが人体実験を許すとは思えん。ビゼの誘拐といい、なにか裏があるのは間違いないだろうが……」
「……!マグヌス、危ない!」
瞬間、マグヌスの足元でガラスが割れる音がした。
12号の対応が遅ければ、マグヌスはドロドロに溶けた足元の床と同じ運命を辿っていただろう。
「……『闇色』。黒く濁ったこの心は、さながらブラックコーヒーのよう」
謎の言葉を発しながら現れたのは、どこか見覚えのあるような気がする一人の少年だった。
「……そんな俺の心に、君という名の甘いミルクが降り注いだ……Foo……溶けちまうぜ……君の瞳に……」
「ふぬおおおおおおおおっ!!」
大きな奇声を上げながら、マグヌスはその場でのたうち回る。
「ち、ちょっとマスター!?あの子、何者ですか?なんだかマスターに面影があるような……ハッ!?も、もしかして…………息子さん?」
「アホか!俺様に息子はおらん!そもそもヤツは魔導人形だ!」
「……『伝えたい想い』。君は俺という乾いた大地に咲いた、幾何学的なサンフラワー」
「ぐぬああっ!や、やめろ!俺様の過去を掘り返すのはやめろおおおお……!」
機械的な笑みを浮かべながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくる少年。
「僕の名前はマヌケス。マヌケなマグヌスの少年時代をベースに錬成された魔導人形さ。ヌッハッハ!」
「……マスター。笑い方までそっくりですよ、あの子」
「う、うるさい!くだらない分析をしているヒマがあるのなら、さっさとアイツを倒せっ!」
過去を葬る
水想遊戯バトル
魔導人形マヌケスの稼働を急停止させ、自らの忌々しい(?)過去を封印することに成功したマグヌス。
「まったく、趣味の悪い魔導人形を作りおって。製作者め、タダで済むと思うなよ……?」
「あらあら。もしかして、私のことを言っているの……?マグヌス」
妖しい笑いを浮かべながら現れたのは、ビゼを攫った魔術師、メルークだった。
「……やはり貴様の嫌がらせだったか、メルーク。まぁいい。それで、俺様の娘をどこへやったのだ?」
「あら、いやねぇ。まるで私達が誘拐犯みたいな言い方……あの子は、自らの意志でここへ来たのよ?」
「ヌハハ!そんな見え透いたハッタリにこの天才が引っかかるとでも?」
「マ、マグヌス。あの人、ウソはついていない……みたい」
「……!な、なんだと!?」
相手の心を見抜くほどの鋭い感覚を持つ12号の言葉に、マグヌスは動揺を隠せなかった。
「ウフフ……あの子、生まれてからまだ日が浅いのでしょう?そんな短い期間で愛想を尽かされるなんて……父親の資格ゼロね、マグヌス」
「う、うるさい!そもそも、協会はビゼをさらってなにを企んでいるのだ!?」
メルークは嬉々とした様子で、マグヌスの問いに答える。
「未だ誰も錬成に成功したことがない“賢者の石”。うちの会長はね、その錬成法をとうとう見つけたのよ」
賢者の石。それは、あらゆる神秘的な可能性を秘めた伝説の物質……その錬成は、全ての錬金術士の最終目標でもあるのだという。
「賢者の石の錬成にはね、多くの人間の命と、人工の魂“フュエル”が必要不可欠なの。そして、フュエルはこの世界にたった一つしかない。あなたが創り出した、あのホムンクルスの中にしか……ね」
頷く12号を見て、マグヌスはメルークが真実を告げていることを確信する。
「なるほどな……そのために街の人間達とビゼを攫ったわけか」
「ウフフ……あなたも錬金術士なんだから、この実験がいかに崇高な意味を持つか、理解できるでしょう?ねぇ、今からでも遅くないわ……協会に戻って、私と一緒に歴史に名を残さない?」
「断る。名声だの名誉だの、俺様はこれっっぽっちも興味がないのでな」
提案を一蹴されたメルークは、少しいじけた様子で口を開く。
「…………戻って来てくれたら、マヌケス人形の大量生産を中止してあげてもいいわよ?」
「ええい、ふざけるな!協会には戻らんし、忌々しい人形の大量生産も絶対にさせんからな!」
「あらあら、いやねぇ熱くなっちゃって……。じゃあ、昔みたいにゲームでもする?私が勝ったら、あなたは協会に戻る。あなたが勝ったら、あなたにホムンクルスの居場所を教える……どう?」
「……いいだろう。それで、ゲーム内容は?」
メルークはニヤリと微笑むと、杖の先端をマグヌスと(プレイヤー名)の方に向ける。
「そうねぇ。錬金術士の誇りを賭けて、私の水想魔術とあなたの錬金薬を直にぶつけ合う……というのはどう?」
「……フン、受けてやろうではないか。ただし、誇りを賭けた以上は約束を違えるなよ?」
ゲーム開始
動物大脱走バトル
「ヌハハ!どうやら、このゲームは俺様の勝利のようだな。さあ、ビゼの居場所を教えろ」
「……わかったわよ。錬金術士の誇りを賭けた以上、悔しいけど約束は守るわ。けどね、マグヌス……協会に戻って来てほしいって気持ちは、本当に本当なのよ?」
ブツブツと小言を言うメルークの案内を受け、(プレイヤー名)達はついに最下層への通路を歩み始めた。
その道中……周囲に設置されていたカプセルが突然開き、中から様々な動物達が飛び出して来た。
「ひゃあっ!?オ、オバケですよ、マスター!なんとかしてくださいっ!」
「ええい、服を引っ張るな。どう見てもオバケではないだろうが」
怯えるアキナを落ち着かせ、マグヌスはゆっくりと動物達へと近づいていく。
「キメラ用の実験動物として捕まっていたのだろう。しかし、自力でカプセルから抜け出すとは……なかなか気に入ったぞ。おい、お前達。この天才が助けてや――」
気が立っているのか、動物達は鋭い目つきでマグヌスを見上げると、大きな鳴き声を上げ始めた。
「……おい、12号。こいつらがなにを言っているのか、わかるか?」
「う、うん。『我々をこのような下賤な環境へ放り込んだ愚劣な人間どもを許すな』って言ってる」
「そうか。では、『この天才は協会の人間ではない。お前達の敵ではないのだ』と伝えてやってほしいのだが」
12号は身振り手振りで、マグヌスの言葉を動物達に伝える。
……しかし、動物達はさらにヒートアップしてしまう。
「『ぬかしおる。そもそも自分のことを天才だの、我々のことを“お前達”だの、貴様は自らの立場というものを弁えていないようだな。愚鈍な人の子よ』って、言ってるみたいだけど……」
「な、なんてプライドの高い連中なのだ……!この天才がせっかく助けてやると言っているのに!」
マグヌスの言葉を宣戦布告と受け取ったのか、生き物達は一斉に襲いかかってきた……!
「フン、いいだろう。そっちがその気なら、この天才が全力で迎え撃ってやろうではないか!」
「ま、待って、マグヌス!この子達、今は気が立っているだけみたいだから、まずは落ち着かせて……」
……12号の提案も空しく、マグヌスは動物達とケンカを始めてしまった。
「はぁ……。ついでに、マスターのことも落ち着かせないとダメみたいね……」
なだめる
異才発明家バトル
「ハァイ、マグネス!お久しぶりで~ス!とても会いたかったでござ~ル!」
「げっ!?リ、リザンヌ……!ハッ……貴様がここにいるということは、もしやネコラのチビも……」
「おーっ、マクベスー。げんきしてたー?」
着物を着た女性と、猫型マシンに騎乗した少女に寄りつかれ……マグヌスは大声を上げる。
「“マグヌス”だ!二人揃って名前を間違えるな!あぁくそ、なんて最悪な巡り合わせなのだ……!」
「ヘイ、マキナス!実は拙者、ベリベリークールなアンドロイドをネコラと一緒に開発したのでス!稼働テストも兼ねて、お得意の錬金戦法で相手をしてあげてほしいでござ~ル!」
すると、奥の部屋から侍のようなアンドロイドが颯爽と現れた。
「……錬金術士“狂想”。対象情報認識完了。殲滅開始」
ケンシンと呼ばれたアンドロイドは振動剣を構え、バイザーから発せられる眼光でマグヌスを見据える。
「待て待て待て!今はお前達の相手をしているヒマはない!」
「マボナス、聞いてくださ~イ!拙者とネコラが共同開発したプロト・ケンシンは、まずゴーレムの自立駆動性質を粘菌コンピュータで演算して、それからそれから―――」
「話を聞け!あと、俺様はマグヌスだ!いいかげん覚えんか!」
そんな状況を見かねたアキナが、マグヌスと(プレイヤー名)の前に躍り出た。
「あなた達、いい加減にしなさいっ!自分達がなにをしているのかわかっているのですか!?多くの人々を犠牲にして、賢者の石を創るなんて……!」
「無駄だ、こいつらは自分の研究にしか興味がない。この様子じゃ、賢者の石錬成計画のことは全く知らんのだろうよ。そんなことより、厄介なのは…………」
後頭部を掻きながら、マグヌスはチラリと二人の錬金術士に視線を向ける。
「という新たな錬成理論を構築したことで、グラビティメタルに非常に近い純粋な固体を液体にして駆動用のエネルギーへと変換したのでござ~ル!さらに拙者はそこにカーボンナノチューブの――」
「マケベスー。ついでにネコラの開発したシュタールカッツェの駆動テストにも付き合ってー」
「…………こいつらが、人の話を全く聞かんということだ」
大きなため息を吐きながら、マグヌスは錬金薬を構え、戦闘態勢に入った。
「こうなってしまった以上、力ずくで切り抜けた方が早い。俺様はあのケンシンとかいうのを相手にする。(プレイヤー名)と家政婦は妨害が入らないよう、あの二人を牽制してくれ。頼んだぞ」
テストに付き合う
光神誤召喚フェア
「チィ、この天才を手こずらせるとは意外とやるではないか。しかたがない、これだけは使いたくなかったが……」
マグヌスは魔法陣が描かれた、一枚の古びた羊皮紙を懐から取り出す。
「いざという時のために後輩に描かせたこの陣を起動する時が来たようだな!ヌハハハ!これで俺様の勝ちだァ!」
人差し指の腹をかじり、魔法陣に血文字の名を刻むマグヌス。すると、羊皮紙に描かれた魔法陣が起動し――
「…………え?あ、あれ?」
現れたのは、神々しいオーラを放つ一人の女性だった。
「ち、ちょっと、どこですかここ!?私、アースガルズの見張りをしていたはずじゃ……え、なにアレ?ロボット?え、え……?」
状況が理解できず、オロオロとする女性を見て…………マグヌスは言った。
「だだ、だっ、だ、誰だ貴様は!?」
「ここここっちのセリフです!アポなしでこのヘイムダルを召喚するなんて、どういう要件ですか!?」
「しょ、召喚……?この魔法陣は強力な錬成武器を召来させるものだと、ライサからは聞いていたが……」
ヘイムダルと名乗った女性は、マグヌスと共に魔法陣の描かれた羊皮紙を覗き込む。
「……陣は間違っていないようですね。となると、この血文字で描かれた履行者名になにか不備があって、陣が誤発動を起こしたと考えるのが妥当でしょう」
「名前に不備だと?そんなわけがなかろう。『超天才マグヌス様』と、ちゃんと書かれているではないか」
「それですよ!それ絶対に本名じゃないですよねッ!?」
「本名ではないが、事実だぞ?」
一瞬、ヘイムダルは腰の剣でマグヌスを斬りそうになったが、すんでのところで思い止まった。
「とにかく!私を元の世界へ返してください!私、休暇を取るためにがんばってがんばって働いていたんですから!」
「それは構わんが、今は取り込み中でな。まずはこのピンチを乗り越えるのを優先したいところなのだが」
「あ~もう、わかりました、わかりましたよっ!私も協力しますから、絶対に元の世界に戻してくださいよッ!?」
黒幕賢人バトル
「そんな……協会がそんなことをしていたので~スか!?せ、拙者、今すぐ連れ去られた人達を救出してくるでござ~ル!」
ようやく話を聞いてくれたリザンヌ達は、賢者の石錬成計画を阻止するために動いてくれるようだ。
「むっ……!(プレイヤー名)、家政婦、気をつけろ。この先……なにやら禍々しい気配が漂っている」
ビゼがいると思わしきフロアの前にマグヌス達が差し掛かった、その時……。
「マ、マグヌス!やはり来ていたのか!ああ、よかった……!」
一人の青年が、目を閉じたビゼを抱えながら、マグヌスの元へと駆け寄る。
「……!ビ、ビゼ!大丈夫か、ビゼ!?」
「し、心配いらないよ。フュエルが完全に吸い取られる前に、なんとか助けてあげることができたから……」
おどおどする青年を、マグヌスは鋭い目つきで睨みつける。
「ティファレト、貴様……!なぜ賢者の石を創ろうなどと企んだ!?それでも協会の会長か!?」
「ち、違うんだ!僕は“彼女”には絶対に逆らえなくて……。と、とにかく君達はここから逃げ――」
すると、一人の少女がゆっくりとマグヌス達の前に姿を現した。同時に、ティファレトの動きが固まる。
「は~い、そこまでっ。ダメじゃないかぁティファレト君。賢者の石の錬成を途中で投げ出しちゃあ!」
「ぐっ……!は、早く逃げるんだ……マグヌス……ッ!」
「ありゃ?とうとう私の支配が意識まで及ばなくなったか……意外とやるねぇ、ティファレト君!さすがボクの認めた男だ!」
少女は無邪気な笑みを浮かべながら、マグヌス達の前に立ち……丁寧におじぎをする。
「自己紹介が遅れたね。“原初のヒト”だの“サンジェルマン”だのと色々呼び名はあるけど、今はアインって名乗っておこうかな。君のことはティファレト君からよく聞いているよ、マグネット君!」
「マグヌスだ!ええい、何者だ貴様は?協会の人間ではないな?」
「説明すると長くなるなー。とりあえず、嫌がるティファレト君を無理やり操って、賢者の石を創らせようとした黒幕……って言っておけばわかりやすい?」
あっけらかんとした様子で語るアインという少女の言葉に、マグヌスはニヤリと微笑む。
「うむ、よくわからんが実にシンプルでいい。では、もう一つ。貴様はなにが目的なのだ?」
「その問いもシンプルでいいねー!まぁ……今回は賢者の石っていう面白い道具を創って、停滞しつつある人類を全部一つに融合させようとした……みたいな?」
……彼女の言葉には、善意も悪意も感じられなかった。
「……貴様が理の外の存在であるということは理解した。しかし、この天才がいる限り、そのようなバカげたことはさせん!ヌハハハ!」
「お、いいね~!それじゃ、ちょっとだけ力を試させてもらおうかな。まぁ、どっちかって言うとボクはそっちの君に興味があるんだけどねー」
アインは一瞬だけ、(プレイヤー名)に顔を向けた……が、すぐにマグヌスの方に視線を戻した。
「さぁさぁ、人類の可能性をこのボクに証明してみせて!もし証明できたら、ティファレト君のことも自由にしてあげるからさ!」
可能性を証明する
偽神撃破バトル
「どうやら、人間にはまだ可能性があるみたいね。なら、アインさんは先においとましよう。約束通り、君も今日から自由の身だよ、ティファレト。じゃあね~」
アインは口笛を吹きながら足元に魔法陣を出現させ、ゆっくりと姿を消した。
「――――――――パパ?」
「……!ビゼ、大丈夫か!?」
マグヌスはゆっくりとビゼの体を抱え上げる。顔色は悪いが、命に別状はない状態であったことに、ひとまず安堵の息を吐く。
「……ビゼ。その、なんだ。お前は、自らの意志で俺のところを離れたらしいな。俺のことが……き、嫌い、なのか?」
ふるふる……と、首を振るビゼ。
「――頭の中――声、聴こえたの――ここに来れば、完全な命に――してあげるって」
「完全な命……だと?」
「――私、培養液に浸からないと――生きていけない――それに、自分がなぜ存在するのか――わからない――それは、私が――不完全だから――だから、私――完全に、なりたかった」
弱々しい声で、ビゼは言った。
「――完全に、なれば――パパ――喜んでくれるって――思った、から」
今度は、マグヌスが首を横に振る。
「……完全である必要などない。命というものはな、全て不完全なものだ。そして、不完全だからこそ、お互いを補おうとするのだ」
マグヌスはビゼの頬に、そっと手を当てながら言った。
「ビゼ。お前は望まれて産まれた不完全な命だ。俺が欲しかった、俺の希望なんだ」
その言葉に安心したのか、ビゼはゆっくりと目を閉じ……小さく寝息を立てはじめた。
「……ティファレトよ。ビゼを救ってくれたこと……心から感謝するぞ」
「礼には及ばないよ。元はといえば僕が招いた事態だ。それに、一目でわかったからね。そのホムンクルスは、ウィノナの……亡くなった君の奥さんの遺伝子を宿しているんだろう?」
……マグヌスはどこか遠い目をしながら、ロケットペンダントの蓋を開く。そこには、一人の女性の写真が入っていた。
「ウィノナは子どもを産めない体質だったからな。だが、俺は約束したのだ。俺達の子を、必ずこの世に誕生させると。彼女は先に病で逝ってしまったが……それでも、最期まで喜んでいたよ」
マグヌスの言葉と共に静寂が訪れかけた、次の瞬間……大きな地震が起こった。
「どうやら、錬成途中だった賢者の石が地下で暴走を始めたようだ……すぐに止めに行かないと!」
「……よし、俺様も行こう。アキナ、ビゼを連れて先に外へ出ろ。(プレイヤー名)は……フッ、聞くまでもなかったようだな」
『……侵入個体を人間と認識し、言語をもって語りかける。立ち去れ、人間よ。我は、この世全ての生物と融合を果たし、不完全な生命を単一の完全なる生命へと変換する者なり……』
「ほう……その口ぶりだと、ビゼをかどわかしたのは貴様のようだな」
ティファレトによると、彼女は“賢者の石の生体防衛機構”であり、賢者の石そのものでもあるのだという。
「なるほど……では、こいつを破壊すれば全てが丸く収まるというわけだな。実にシンプルでいい」
『……愚かな。完璧な生命となれば、生命の限界を越えることが可能になるというのに』
「完璧はよせ。完璧はよくない。それは求め続けるものであって、手に入れるものではないのだ。この天才がそれを証明してやろう……覚悟しろ、賢者の石よ!」
賢者の石を破壊する
エピローグ
マグヌスとティファレトの息の合った猛攻に、バルクロアはとうとうその場に膝をついた。
「……我は、なぜ生まれたのだ?完全になれぬのであれば、我の存在に意味など……」
形を保てなくなり、自壊を始めるバルクロア。その体は紅い小さな結晶となり、ヒビ割れながら地面へと――
「させんぞ!とお~うっ!天才による天才のための天才的な天才キャ~~ッチ!」
――落下する瞬間。
マグヌスは結晶を掴み取ると、予め用意しておいた小さなフラスコの中に、その結晶を大切にしまった。
「どんな形であろうとも、お前も錬金術によって創られた命だ。ならば、俺様の前で無駄に命を散らすことは不可能だと思え!ヌハハハ!」
ひとしきり笑ったあと、マグヌスは優しい口調で続ける。
「安心するがいい、未完成の命よ。俺様がいる限り、この不完全な世界はいついかなる時も狂騒を続ける。再び目を覚ました時は、生まれた意味を問う暇など与えんからな。覚悟しておくのだぞ?」
……ホムンクルスの培養液が入ったフラスコの中で、紅い結晶は自壊することをやめた。
――こうして、深霧街で起こった事件はひとまずの終焉を迎えた。
事件が明るみになり、錬金術協会の信用は失墜。組織は事実上の解体となった。
……が、謎の少女アインの手回しがあったのか、全ての責任が会長のティファレトへと向くことはなく事件は収束……深霧街が剣呑な日常を取り戻すのに、そう時間は掛からなかった。
「――ほら、パパ――(プレイヤー名)さんに――さよなら――して――?」
「む、ぐぐぐっ。ほ、本当に行ってしまうのか?(プレイヤー名)よ……。もう少しぐらい滞在していってもよいではないか……」
「――パパ。(プレイヤー名)さん――困ってる――から――」
手を繋いだマグヌスとビゼに見送られ、(プレイヤー名)は深霧街の出口までやって来た。
「あー、(プレイヤー名)よ。その、なんだ……色々と助かった。感謝するぞ」
不器用に礼を言いながら、マグヌスと(プレイヤー名)は握手を交わす。
「また遊びに来い。そして、困ったことがあればいつでもこの天才を頼るといい。お前の助けとあれば、どこへだろうとすぐに駆けつけてやるからな!ヌハハハ!」
マグヌスの言葉を背に受け、(プレイヤー名)は新たな旅路へと踏み出していくのだった……。
「……さあ。家に帰るぞ、ビゼ。皆が待ってる」
「――――うん」
深霧街の錬金術士 -奪還のELIXIR-完
story by 間宮桔梗
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