勇還のラストリゾート プロローグ
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234:勇還のラストリゾート 冒険への答試
開始前
旅商人の少女の目的とは!?
プロローグ
「なぜ国王はあんな小娘を……」「誤断と言わざるを得ない」「商人に勇者様の代わりなど務まるわけがない!」「いくらあの人の娘だからってねぇ」「この国も終わりかもしれんな」
しかし、町の爽やかな印象とは裏腹に、住民達は不安に陥っていた。
「ねえ!君ってもしかして冒険者さん?あ、それとも傭兵さんだったりするのかしら?もしよかったら、私のキャラバンの護衛をお願いしたんだけど」
そんな時。暗鬱とした空気を吹き飛ばすかのような元気な声が***の耳に入る。
「っと、まずは自己紹介ね。あなたは……***って言うのね。私、旅商人のフィナって言うの。知っているかもしれないけど、実は今、この王国……というか、下手すると世界が大変なことになりそうなんだけど」
フィナの話によると、この王国には無敵の力を持つ“勇者”と呼ばれる者がいるらしい。勇者は王国を脅かすあらゆる障害を、たった一人で幾度となく退けてきたのだという。
そして、数日前。王国領土の一つである小さな島が、魔王を名乗る者と、その部下達によって乗っ取られてしまった。
魔王の宣戦布告に対し、国王は勇者に武力による制圧を許可し、大事になる前に島へと送り込んだのだが……
「信じられないことに、勇者様は魔王に捕まっちゃったみたいなの。魔王は勇者様を人質にして、王国を受け渡すようにって要求しているんだけど、国王がそんな要求を呑めるはずもない……。そこで、たまたま町を訪れていた私に白羽の矢が立ったってワケ!」
フィナの父は世界的に有名な豪商であり、その類稀なる経済力と交渉力で無血革命をやり遂げた他、領土や資源の問題を解決へ導くなど、英雄と称されるほどの働きを成した人物として知れ渡っているらしい。
だが、フィナの父は新大陸へと渡ってしまい、現在は連絡がつかない状態にある。そこで国王は、彼の娘であり、若くして様々な成果を上げているフィナに声を掛けた。
「まぁ、勇者様一人に頼り切っていたシワ寄せが来たって感じよね……。とはいえ、国王軍を動かしてしまえば魔王との戦争は避けられなくなる。それに、百人以上の騎士が束になっても勝てないほどの力を持つ勇者様を捕えてしまうような敵を、並の戦士が倒せるわけもないし……」
ゆえに国王は“軍に属さず、かつ交渉や取引によって事の解決に当たれる者”として、豪商の娘フィナに勇者救出と、魔王との和平交渉を正式に依頼したのだという。
「そういう経緯で、私はいま旅支度をしているの。アイテムを仕入れたり、護衛隊を雇ったりね。そんな時、あなたを見てピンと来たの!あなたは只者じゃない……きっと、いくつもの修羅場を超えてきたのでしょう?私、目利きには自信あるの!ねっ、もしよければ一緒に来てくれない?報酬は弾むわ!」
その煌々たる瞳に英雄の気質を感じた***は、彼女に雇われる形で行動を共にすることになったのだった。
「フィナお嬢様?そちらのお方は一体……。ま、まさか新たな付き人ですこと!?私はリストラなのでございますか、お嬢様!」
フィナとかいちょが握手を交わしていると……突然、精緻な容姿をした金髪の女性が、驚愕の表情を浮かべながらフィナに声を掛けてきた。
「げっ。ど、どうしてクレマがここに……。馬車で待ってるって言ってなかったっけ……?」
「はい。ですが、お嬢様のお面を汚すような発言がふと、耳に入り……居ても立っても居られず、こうして馳せ参じた次第でございますわ!そう、全ては愛ゆえに!」
どうやら、彼女はフィナの付き人のようだ。見たところ、二人はかなり親しい様子ではあるが……
「クレマ。私があなたを旅支度に付き合わせなかったのはね、あなたが無駄遣いをするからよ!私に似合うから~って言ってドレスやアクセサリーやパジャマを大量に買おうとしたり……。あなたがいると、全然買い物が進まないのっ」
「ああ、なんという愛あるお言葉!しかし、僭越ながら申し上げますが、お嬢様も年頃の淑女であるがゆえ、もう少し身なりに気を遣うべきかと。いいえ、これは決して私個人がキュートなお嬢様を瞳に焼きつけたいだとか、決してそういう……あ、あら?お嬢様、お嬢様はいずこへ!?」
フィナは***の手を掴み、そのまま市場の方へと走り出す。
「行きましょう、***。愛モードに入ったクレマは意地でもついてくるだろうから、彼女から逃げつつ旅支度を済ませましょう!それと、さっきから別の人にも見られてるような気がするから……注意して進むわよ」
>>旅支度をする<<
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さあ、仕入れの時間よ!
準備はいい?
まずは500kmね!
旅商人としては、ちょっと物足りないけど。
これ、あなたに渡しておくわ。
私が持つよりも安全な気がするっていうか。
秘密の鍵束を1個手に入れました。
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お金もたっぷり持ったし、行きましょう!
準備はいい?
まずは500kmね!
旅商人としては、ちょっと物足りないけど。
これ、あなたに渡しておくわ。
私が持つよりも安全な気がするっていうか。
秘密の鍵束を1個手に入れました。
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お金もたっぷり持ったし、行きましょう!
旅支度をする
エピローグ
「はぁ、はぁ……。ようやく追いつきましたよ、お嬢様!さあ、私と一緒にお買い物へ!」
「買い物はもう終わったわ、クレマ。次は船の手配をしなきゃいけないから、港の方へ行きましょ」
「ガーーン!な、なんという悲劇……。いいえ、しかし!お嬢様との愛ある船旅に想いを馳せている自分がいるのも確か!承知致しました……では、このクレマがお嬢様の船になりましょう!!」
「う、うん。ちょっとテンション抑えようか、クレマ」
フィナが苦笑いをしながら、やれやれといった様子で呆れていると……
「ちょ~っと待ったァ!アンタ、国王直々の勅命を授かったっていう旅商人だろ?その旅……このピベリーもつれていってくれ!」
と言いながら、筋肉質な騎士は頭を下げる……のではなく、肉体美を見せつけるようなポーズを取る。どうやら、フィナが感じていた視線はこの男のものだったようだ。
「え、えーっと。ピベリーさん、ごめんね。実はもう護衛隊は雇ってしまったの」
「うごォ!?マ、マジか……。いや、待った!なら金はいらねぇ!アンタの旅に同行させてもらうだけでいい!頼む!」
と言いながら、ぽっこりと膨れた両腕の上腕二頭筋を見せつけるピベリー。話を聞くと、彼は幼い兄弟達と共に住んでおり、一家の稼ぎ頭として騎士になったのだという。
しかし、現在の給与では家計全てを賄うのがキツいため、武功を上げて給与のアップを狙っている……とのことらしい。
「うーん、契約金無しで人を雇えるのは確かに大きいわね……。けど、危険な旅になるわよ?なにせ、魔王側はあの勇者様を捕えてしまうほどの力を持っているんだから」
「あー、それなんだけどよ。今の状況って、ちょいと変だと思わねーか?」
「……?変って、どういうこと?」
「ほッ、ほッ……。だってよォ。魔王側には、人類最強と呼んでも過言じゃねぇ勇者様を捕えちまうほどの力があるんだろ?ほッ……」
ピベリーは人差し指一本で腕立て伏せをしながら、いたって真面目な表情で自身の考えを口にする。
「そいつは実質、この王国なんていつでも潰せるだけの力を持ってるってことだ。ほッ……。なのに、魔王側は勇者様を人質に取って島に籠城している。これ、ムジュンしてねぇか?ほッ、ほッ……」
言われてみれば……と、フィナはクレマと顔を見合わせる。
「攻めてこないのではなく、勇者様が来たことで何かが起こって、魔王側は攻めることができなくなった……っていうことかしら?」
「ほッ……。まぁ、あくまで推測だけどな。要するに俺が言いたいのは、ほッ……。アンタの旅には予想外のことが起こる可能性が大きいってことだ。なら、あらゆる自体を想定して、必要以上の準備をしておいた方がいい。物資も然り、人材も然り……ということで、頼む!この通りだ!」
腕立て伏せをやめ、今度は普通に頭を下げるピベリー。すると、クレマがそっとフィナに耳打ちをする。
「やや暑苦しい騎士ではありますが、物事を冷静に見極める力があることは間違いないようです。それに、王国騎士ならば裏切ったり逃げるような真似はしないでしょう」
「そうね。ちょっと暑苦しいけど、意外と良い人材かもしれない。それじゃあ……ピベリーさん、あなたを正式に雇うことにするわ。私はフィナ。よろしくね」
フィナの言葉を聞き、ピベリーはゴツゴツとした両腕を勢いよく空に掲げ、歓喜の気持ちを肉体で表現する。
「ありがとよ!英雄と呼ばれた豪商の娘さんと旅ができると聞いて、俺の胸筋も喜びに震えてるぜ。改めて、何に変えてもアンタを守り抜くと、この筋肉に誓おう。よろしくな、お嬢!」
「そ、そこは剣に誓うところなんじゃ。というか、お嬢って……まぁ、いいか」
……こうして、フィナ達は新たな仲間と共に港へと足を進めるのだった。
235:勇還のラストリゾート 船旅への投資
プロローグ
「さぁて。酒場で仕入れた情報に寄ると、今日は海賊団“ローレライ”の船が町へ訪れているんだって。必ず港を通るはずだから、少しここで待ちましょ。彼らなら船を貸してくれるはずよ」
さらっと衝撃の発言をかましたフィナに、クレマは思わずフィナの顔を二度見する。
「お嬢様!?か、海賊とは、略奪を生業とする海の荒くれ者達のことでございますよね?そんな犯罪者達の手を借りるとは、一体どういう……」
「そりゃ違うぜ、付き人さん。海賊っつっても、ローレライは王国に雇われた海賊上がりの義賊だ。海の警備や物資運搬を行う代わりに、王国の領海内を自由に行き来し、自由に商売を行う連中なのさ。そうだよな、お嬢?」
「うん、その通りよ。さながら“海の法の番人”ってところね」
ピベリーの解説に、首を縦に振るフィナ。
「私達がこれから向かうのは魔王のいる島。何が起こるかわからない以上、丈夫な船で行くのにこしたことはないわ。それに、海を知っている人が一緒ならとても心強いでしょう?」
「おいおい。まるで俺達がアンタらを船に乗せること前提で話が進んでいるようだが……。悪いね、俺は信頼できないヤツは船に乗せない主義なんだ」
声のした方へ振り向くと、そこには三白眼の海賊らしき男が数名の部下をつれ、堂々とした態度で立っていた。すると、フィナはすぐに彼の方へと近づき、小さく頭を下げる。
「こんにちは!あなたが海賊団ローレライの船長、レグナスさんですよね?」
「いかにも、俺がレグナスだ。旅行気分で船に乗りたいってんなら、とっとと帰りな。俺の船はガキンチョの遊ぶ場所じゃねぇってんだよ……」
「わあっ!その髪飾り、デザル地方の砂漠集落の露店に売っているものですよね?確か、原住民族の工芸品として高値で取引されている……」
「あ、わかるぅ!?そうそう、しかも祭儀用に使われるレアモンなんだよこれ!いやあ、話がわかるねぇ嬢ちゃん!」
一瞬で船長と打ち解けたフィナは、改めて報酬を提示し、乗船の許可を貰おうとする。
「答えは……ノーだ。確かに、嬢ちゃんは信頼に値する人間ではあるかもしれねぇ。だからこそ、ひ弱な嬢ちゃんをそんな危険な場所に連れていくワケにはいかねぇのさ。わかってくれ……こいつぁ、海の男の矜持ってヤツなんだ」
ひ弱……という単語に少々カチンときたのか、フィナは笑顔のままこめかみに青筋を立てる。
「つまり……私が強いことを船長さんに証明できれば、船に乗せてくれるってことですね?」
「ああン?まぁ、確かにそうだが。けどな、嬢ちゃん。威勢を張ったっていいことは何も」
「パラボル。私は、船長との一対一での決闘を希望します」
パラボル……という単語を聞いた瞬間、レグナスの部下達がざわつく。そして、同時に空気が震え……レグナスの雰囲気がガラリと、冷たいものに変わる。
「……笑えねぇな、嬢ちゃん。そいつぁ、海賊にとっちゃ命を投げ捨てるのに等しい単語だ。言葉の意味……ちゃんとわかって言ってんのか?」
「もちろんです。パラボルを宣言した者は、船長と直接交渉する権利が与えられる。そして、船長がそれを拒むことは許されない。面子を誇りとする海賊からすれば、内容次第によっては船長……しいては、海賊団そのものを侮辱する行為に等しい。ですよね?」
「…………。そこまでわかってんなら、俺から言うことは何もねぇ。おい、野郎ども!アレ持って来い!」
命令に従い、レグナスの部下達は積み荷の一部を解くと、その中から鋭利で巨大な碇を取り出し、レグナスへと渡す。どうやら、この碇が彼の武器のようだ。
「海の掟じゃ、決闘前には名乗りを上げるのがルールだ。改めて……俺は海賊団ローレライの船長、レグナスだ。アンタは?」
「見た目は筋肉、心も筋肉。正義のマッチョ騎士ことピベリーだ」
「愛ゆえに愛を唱え愛に溺れる愛伝師、クレマと申します」
「聞いてねぇよお前らには!そっちの嬢ちゃんに聞いてんだよッ!」
心配して出しゃばってきたピベリーとクレマを片手で制しながら、フィナは一歩前へと出る。
「渡り鳥商隊の隊長を務めている、旅商人のフィナ・ハーシュよ!いざ、尋常に勝負!」
「ッ!?ハーシュだと……。そうか、そういうことか……ハハ、おもしれぇ!かかって来いってんだよ、フィナ・ハーシュ!荒波を砕く海の男の力、存分に味わいなァ!」
>>決闘開始<<
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商人にとって位置登録は必須技術なんだから!
騒ぎを聞きつけて、港に人が集まってきたわね……。
海賊に相手をしてもらえるなんて、光栄じゃない!
バトルも商売もフォーメーションが大事よ!
数の力、見せてあげる!!
チャンスは確実に掴む!商売の基本よ!
進め、旅商人フィナ!なぁ~んてね♪
さあ、行きましょう!私達の本気、見せてやりましょ!
エピローグ
そして、戦いが佳境に入ろうとした時……レグナスは自分の武器を地面に置いた。
「ストップだ、嬢ちゃん!これ以上の戦いは単純な殺し合いになっちまう。そいつはお互いに望むところじゃないだろ?決闘はここまでにしておこう」
「はあ、はあ、はあっ……。そ、それじゃあ……!」
息を切らしながら、フィナはレグナスの顔を見上げる。
「……前言を撤回するぜ。ひ弱などと罵詈雑言を放ったこと、どうか許してくれ。嬢ちゃんは間違いなく本物だ……遠慮なく俺の船に乗りな。海の男の誇りにかけて、必ずアンタを島へ連れていくと誓おう!」
レグナスがそう宣言すると、彼の仲間や、フィナが連れている護衛隊、さらには周囲に集まっていた町民達から歓声と拍手が上がった。
「ああ、さすがですお嬢様!内心ヒヤヒヤしておりましたが……お嬢様なら必ず、愛の力で何とかしてくれると信じておりました!」
「すげぇよ、お嬢!細くもしなやかな筋肉の隆線からタダ者じゃないとは思ってたけどよ、まさかここまで戦えるとは思わなかったぜ!見てくれ、興奮のあまり俺の筋肉も震えたってらァ!」
歓喜のあまりフィナを抱きしめるクレマと、高速スクワットで喜びを表現するピベリー。すると、やや困った様子のフィナにレグナスが近づいてくる。
「さすがはあの人……グリアム・ハーシュの娘といったところか。言われてみりゃ、あの人と同じ目をしてやがる」
「……!船長、お父さんと知り合いなんですか!?」
「言ったろ、俺たちゃもう仲間だ。呼び捨てでいいし、敬語もよしな」
そう言うと、レグナスはどこか遠い目をしながら、視線を海へと向ける。
「……行きどころもなく、餓死寸前だった俺たち海賊に居場所と役目を与えてくれたのが、何を隠そうアンタの親父だった。あの人がいなけりゃ、俺達は海の上で野垂れ死んでいただろう。命の恩人ってやつさ」
「そう、だったんだ。あのね、私……お父さんを見つけるのが夢なんだ。でも、お父さんのいる新大陸に行くにはお金とか、色んな国の許可とか、たくさんのものが必要で……。だから私、旅商人をやっているの。お金を集めて、信頼を得るために」
目をキラキラとさせながら夢を語るフィナに、優しげな笑みを浮かべるレグナス。
「そいつはなかなか難儀な夢だな。あの人は目を離せば、ふらりとその辺を放浪をしちまう根無し草だ。見つけるには相当苦労すると思うぜ?」
「む……。わ、わかってるもん。けど、絶対に見つけてみせるんだから。一人前になったってことを、ちゃんとお父さんに証明したいの!だから……わっ」
子どものようにムキになるフィナの髪を、レグナスはくしゃくしゃと撫でる。
「だが、今は目の前に危険な旅が迫ってんだろ?先を見据えるよりも、まずは目の前のことに全力で挑みな。それが海の掟ってヤツだ」
船を案内するぜ……と言い残し、レグナスは船員達と先に船に乗った。
「先を見据えるよりも、目の前のことに全力で挑む……か。うん、なんか……いい感じ!」
レグナスの言葉を何度も頭の中で反復させながら、フィナは仲間達と共に、レグナスの船に乗り込んだのだった……。
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