荒野のリベンジャー_プロローグ
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240:荒野のリベンジャー 希望の行方
開始前
荒野での騒動……!?
プロローグ
「そこまでだ、手配犯エマ・ラスウェル。おとなしくお縄についてもらおうか」
すると突然。少し遠くから若々しい男の声が聴こえてきた。反射的に、**は声のした方に振り向く。
「あ、あの!私、本当に犯罪なんてしていませんっ!ましてや、保安官を殺すだなんて……。こ、これは罠なんです!私は冤罪で……」
視線の先には、地面に尻餅をつきながら必死に声を絞り出している、エマと呼ばれた小柄な少女と……
「あんたが罪人か否かなんて些細な問題だ。俺が欲しいのは、あんたの首にぶら下がってる賞金だけなんでね」
その少女に堂々とした様子で銃をつきつけている、一人の青年の姿があった。
「い、いやいや!些細な問題どころか、とても大切な問題だと思うのですが……?」
「この荒野は無法地帯みたいなもんだ。大切だと思っていたものが次の瞬間にはゴミ屑に変わる。なんにせよ、話はあんたを捕まえてから…………?あんた、確かどこかで……」
改めてエマの顔を見た青年は、疑問符と共に眉をひそめる。そして……時を同じくして、二発の荒々しい銃声が周囲に木霊した。
「ハァイ、ストップ!その子はこのあたくし、ダリア様のターゲットなんだから。邪魔しないでもらえるかしら?」
銃声のした方にはダリアと名乗る、自信に満ちた瞳と牛柄のチャップスが特徴の女性が立っていた。
「チッ、他の賞金稼ぎか……。悪いが、エマ・ラスウェルは俺が貰っていく。聞かなければならないことができたんでな」
「そう、じゃあ今回は譲るわ!な~んて言うとでも思った?というより、もうちょっと周囲に目を配るべきだったわね。ほら、さっきからあなたのことをじ~っと見つめてる人が後ろにいるじゃない?あの人、あたくしの仲間なのよねぇ」
「そんな見え透いたブラフに俺が引っかかると…………ん?」
誰かの気配を感じた青年は、反射的に視線だけを背後へと移す。そこには、一部始終を目撃していた**の姿があった。
「ウフフ。一瞬でも隙を作れればこっちのもの……って、あら?エマ・ラスウェルがいない!?な、なんて逃げ足の速さ……というか、あたくしの馬も奪われてるしぃ!?ま、待ちなさぁい!!」
エマに馬を奪われたダリアは、急ぎ足でその場から走り去っていった。そして、この場に残ったのは青年と**だけとなる。
「その身なり……賞金稼ぎじゃないな。ましてや、あのダリアとかいう賞金稼ぎの手先というわけでもなさそうだ。道に迷った浮浪者……といったところか」
青年は大きくため息を吐いたあと、近くに止めてあった馬に跨る。
「干からびたくないなら後ろに乗れ。町まで届けてやる……と言いたいところだが、まずは仕事を手伝ってもらう。俺の油断が招いた結果とはいえ、半分はあんたのせいでターゲットを逃がしたようなものだからな。それと……妙な動きをすれば即座に撃つ。いいな?」
警戒心をむき出しにする青年。しかし、他に行くアテもない**は、ひとまず彼の後ろに乗ることにしたのだった。
「賞金稼ぎのウェイドだ。あんたは……**か。よし、まずは賞金首のエマ・ラスウェルを追うぞ。まだそう遠くには行っていないはずだ」
……こうして**は、賞金稼ぎのウェイドと共に、賞金首の少女エマを追うことになったのだった。
>>荒野を行く<<
……馬に振り落されるなよ?
まずは500ヤードほど走るか。
適度に休憩を挟めばなんとかなる距離だろう。
こいつを頼む。落し物らしくてな。
俺が持っていると失くしそうだからな……。
令嬢のリボンを1個手に入れました。
行くぞ。準備はいいか?
まずは500ヤードほど走るか。
適度に休憩を挟めばなんとかなる距離だろう。
こいつを頼む。落し物らしくてな。
俺が持っていると失くしそうだからな……。
令嬢のリボンを1個手に入れました。
行くぞ。準備はいいか?
荒野を行く
エピローグ
「はあ、はあ……。わ、私は……本当に、無罪……なのに」
絶望に明け暮れるエマ。しかし、ウェイドはもう彼女に銃をつきつけるような真似はしなかった。
「それは置いておくとして、だ。あんた、どこかで会ったことないか?一年ぐらい前、ディンって商人と一緒にいたところをウエストヘイルで見かけた気がするんだが……。確か、あの時もそれと同じ蝶の首飾りを着けていたと記憶している」
「え……?も、もしかして、ディン・クロウ様をご存知なのですか!?お、教えてください!あのお方は今、どちらに?私、頼れる人がもう彼しかいなくて……」
「半年前に死んだよ。金目当ての野盗に撃たれてな」
「……ッ!そん……な……」
青ざめた表情をしながら、エマはその場に両膝をつく。
「…………。事情があるみたいだな。話してみろ」
「……助けて、くださるのですか?」
「話だけは聞く。ディンと関わりがあった以上、あんたが犯罪者じゃないことは確かだろうからな。それに、手配書のでっち上げなんざ、今の保安官なら平気でやりそうなことだ……。ほら、飲め。あと涙を拭け」
ウェイドは水筒とハンカチをエマに渡し、気分を落ち着かせてからゆっくり話を聞くことにした。
「西部地域に住んでいる貴方ならご存知かとは思いますが……。今、ここは“レッドリバー団”を名乗る武闘派の保安官達による歪んだ法によって支配されています。彼らは力と権力に溺れ、さらには裏稼業の者と手を組み、人道に赴く行為を平然と行っています……」
「……別に、それは今に始まったことじゃない。昔からこの荒野は腐ってるさ」
「ですが、ここ数年で状況は急激的に悪化しています。道楽で人を殺し、罪無き人を見せしめのために処刑し、民衆を恐怖で統治する……。治安を守る側が、治安を乱す側になっているのです」
そう言うと、エマは何かを思い出したかのように、ウェイドと**の顔を交互に見る。
「あ、申し遅れました。改めて……私、エマ・ラスウェルと申します。隣の州にあるタナーズタウンの領主、ラスウェル家の一人娘でした」
「……過去系なのか」
「…………。ラスウェル家は保安官達の凶行を止めるため、政界に呼びかけをしたり、現状を快く思わない“改革派”の保安官や商人達に資金援助をしていました。ですが、その活動を知ったレッドリバー団の襲撃を受けて……お父様は…………」
「……なるほど。で、運よく生き延びたはいいが、連中の手によって賞金首にされたってワケか」
「はい。私は従者につれられ、改革派の幹部であったディン様に助けを請うため、ここまで逃げてきました。でも、その従者も追っ手に殺されてしまって……路頭に迷っていたところを、先ほどの賞金稼ぎとあなたに狙われて……」
エマはその場から立ち上がると、気品のある仕草と共に丁寧に頭を下げた。
「お願いします……!どうか、私を……助けてくださいませんか?改革派の勢力と合流するまで、護衛をお願いしたいのです」
「……報酬次第だ。あんたの首にぶら下がってる賞金以上のものを出せるなら考えてやる」
冷たく言い放つウェイド。どうやら彼は、損得勘定でしか動かない男……らしい。
「……この蝶の首飾りは、ラスウェル家の家宝です。“自由と共に羽ばたけ”という家訓を象徴するもので……売れば、私の賞金以上の額になるかと」
「…………。本当に首にぶら下がってるものを差し出されるとは思わなかったが……まぁいい、それで手を打とう。で、あんたを保護してくれる改革派の勢力ってのはどこにいるんだ?」
「ご、ごめんなさい!私が直接やり取りをしていたのは、ディン様だけだったもので。あ、でも……あの人は言っていました。もし自分に何かあった時は兄を頼れ……と。なので、まずはディン様のお兄様を探そうかと。彼の故郷であるウエストヘイルに行けば、何か手がかりが……」
「その必要はない」
服についた砂埃を払い落としながら、ウェイドはゆっくりと立ち上がる。
「まだ名乗ってなかったな。俺はウェイド……ウェイド・クロウ。ディンは、俺の弟だ」
その言葉をすぐに理解できなかったのか……エマはポカンと小さな口を開け、透き通った瞳を大きく見開く。
「……はあ。あまり頼りたくないが、一人ツテがある。まずはそいつのいる町へ向かうぞ。***も送り届けなきゃならないしな」
……こうして***は、賞金稼ぎの青年と領主の娘と共に、町へ向かうことになったのだった。
241:荒野のリベンジャー 正義の行方
プロローグ
ウェイドという男に英雄の気質を感じた***は、エマの護衛に協力するという形で、彼らと行動を共にすることにしたのだった。
「……ほら、着いたぞ。お嬢様は帽子を深く被っておけよ。あまり人目につかないようにしろ」
「は、はいっ。わかりました!」
馬を止めたあと、***とエマはウェイドに案内される形で、町の中へと足を踏み入れる。
「パーフェクト!お仕事もひと段落したし、お楽しみの射撃訓練に~っと…………あら?あらあら?」
すると、美しい長髪をたなびかせながら、一人の保安官がこちらへとやって来た。同時に、ウェイドは顔をしかめながら溜息を吐く。
「…………はぁ。久しぶりだな、バセット」
「ワォ!“疾風迅雷のウェイド”が顔を見せに来るなんて……今日はスノーストームかしら!?」
「……ッ。妙な冠詞をつけるのはやめろと言っている。あんたのせいで酒場でイジられる回数が目に見えて増えてるんだぞ?最近じゃ知らないヤツにすら絡まれる始末だ……」
すると突然、ウェイドの後ろに立っていたエマが瞳をキラキラとさせる。
「あ!知ってますよ、私!俗に言う“あうとろお”な方々は、やたらとオシャレな二つ名を持っているものなんですよね!なるほど、ウェイドさんの二つ名は“疾風迅雷”ですか……。うぅ、シビれちゃいます!」
「……護衛やめていいか?」
そんなエマに同調するかのように、バセットという保安官はさらに目を輝かせる。
「話がわかるじゃない、見知らぬお嬢さん!けど、彼ってなぜか二つ名をつけられるのを嫌がるのよねぇ……。“超速閃光のウェイド”とか“銃撃紳士ウェイド”とか色々考えてあげてるのに、全然名乗ってくれないのよ」
「バセット。話がある」
「でも、お姉さん本当はわかってるんだから。私がつける二つ名がクールすぎて、名乗るのが恥ずかしいんでしょ?だから私、君にジャストフィットする二つ名をランチ食べながら考えたの!“恥じらいのウェイド”っていうストレートでキュートな」
「は な し が あ る」
リボルバーのグリップを握りたい衝動を必死に堪えながら、ウェイドは人通りの少ない場所にバセットとエマとかいちょを連れていき、エマの置かれている状況を説明した。
「……その話、シェリフの私にしちゃっていいの?」
「あんたがレッドリバー団側じゃないってことはわかっている。むしろ、ヤツらと敵対する立場なんだろう?」
「バット、別に私は改革派ってワケでもないのよ?私はただ、自分が生まれたこの町を守りたいだけ……というか、それで一杯一杯なの。改革派に協力したい気持ちはあるけど、関与を疑われれば町の人達ごと即粛清でしょ?下手に動けないっていうのが現状なのよ」
と言いながらも、バセットはエマの身を心から案じてくれているようだ。
「オーライ。それで、要求は何?君には色々世話になっているし、物資の提供ぐらいなら惜しまないけど」
「箱型の荷馬車を一台借りたい。それと、彼女を改革派の仲間のところまで送り届けたいんだが、居場所に心当たりはないか?」
「…………。この町の安全のことを考えるなら“ない”って言うべきなんだろうけど、保安官のせいで命を狙われている子を放っておくわけにもいかないものね。オーケー、情報を提供してあげる。ただし!私に個人的な頼み事をする時は」
「的当てで勝負、だろ。ったく、相変わらず面倒だなあんたは……。さっさと射撃場に行くぞ」
「ベリーグッド!あ、エマちゃんと***君だったわね。せっかくだし、君達にも付き合ってもらうわよ!1位の人にはとっておきのディナーをごちそうしちゃうから!」
……こうしてウェイド達は、バセットから情報を引き出すため、町の射撃場で的当て勝負をすることになったのだった。
>>的を狙う!<<
位置登録?まぁ、必要ならやっておくべきだろう。
射撃場の雰囲気は嫌いじゃないんだがな……。
バセットのやつは相変わらずだな……。正直、苦手だ。
さて、何が起こることやら……。
単独でやりたいもんだが、そうも言っていられないか……。
チャンスは自ずとやってくる。確実に掴むぞ。
攻め時を誤らないようにな。
ただでさえ今日は疲れてるんだ……。
さっさと終わらせるぞ。
さっさと終わらせるぞ。
エピローグ
「わあ!さすが照れ隠しの……いいえ、超速閃光のウェイドさん!ですね!」
悪気があるわけではないバセットとエマを引っ叩きたくなる衝動を抑えながら、ウェイドは「いいから情報を寄越せ」とバセットに迫る。
「オフコース、約束は守るわ。北にあるノースフォードって町のサルーン(酒場)に、改革派への仲介人がいるって話よ。以前、改革派の使者から勧誘を受けた時に聞いた場所だから間違いないと思う」
それと、もう一つ……と言いながら、バセットは改めてウェイドに向き合う。
「私も君達についていくことにしたわ。さっきヒアリングしたんだけど……うちの町でも、すでにレッドリバー団の被害に遭っている人がいるみたい。だから私、改革派と協力して連中と戦う決心をしたの。正義の鉄槌を下さない限り、この町に安息の日は訪れないだろうから」
「…………正義、ね。まぁ、こちらとしては助かるが、いいのか?この町の安全が第一なんだろ?」
「ノープロブレム!自警団の人達には話をつけておいたから大丈夫。とりあえず、今日は宿で休んでいきなさい。三人とも疲れてるでしょ?」
バセットの言葉に甘え、ウェイドとエマと**は町の宿で一晩を過ごすことになった。
……そして、その日の夜。
ウェイドはいつものように子どもの頃の夢を見た。
「ははっ、さすがだぜウェイド!見たかよ、あの保安官のマヌケ面!しかもあの野郎、小便まで漏らしてたぜ?帽子の鍔をぶち抜かれただけだってのによぉ……くはは、今思い出しても笑えるぜ!」
覆面と外套を外した二人の少年は、誰もいない真夜中の荒野を全速力で走っていた。
「……そういうお前もひどい顔だぞ、エインセル。いいかげん鼻血ぐらい拭いたらどうだ」
「こんなもん、ディンが受けた傷に比べりゃどうってことねぇ。つーか、お前もたいしたタマだよな。自分の弟が盗人扱いされてボコられたってのに、よくまぁ冷静でいられたもんだ。オレより腕が立つお前なら、あのクソ保安官をぶっ殺すぐらいワケなかったろ」
「保安官殺しに手を染めるつもりはない。それに、ディンには『ほどほどに』と町を出る時に言われていたからな」
「ウソつけ!顔面腫らしながら半泣きで『行っちゃダメだよ兄さん!』って言ってただろうが。ったく……ディンは優しすぎなんだっつの。まぁ、オレ達が守ってやりゃいいってだけの話だけどよ」
追っ手を振り切ったあと、二人の少年は小さな丘を上り、ビンを片手に祝杯をあげる。
「なあ、ウェイド……相棒よ。オレ、夢ができたんだ。腐りきった荒野の秩序を変えるっていう、この夜空みてぇにでっかい夢がよ」
「……唐突だな。頭でも打ったのか?」
「まぁ聞けって。お前とディンに会うまで、オレはクソ保安官どもが好き勝手やってるこの世界が大嫌いだった。けどよ、オレと同じような境遇のお前ら兄弟と出会って、連中に仕返しするようになってからは……意外と、この世界も悪くないと思うようになったんだ」
両手をポケットに突っ込みながら、エインセルは星空を見上げる。
「今みたいに小さな反抗を続けてたって世界は変わらねえ。だから、オレは……保安官になることにした。腐った世界に飛び込んで、内側から世界を変えてやるのさ!そう、オレは正義を貫くんだ!」
「……本気で言っているのか?相棒」
「ああ、本気さ!だからよ、ディンのことはお前に任せるぜ。あいつ、商人になるのが夢なんだろ?兄として、お前がちゃんと支えてやれ」
……ウェイドには夢がなかった。それゆえに彼は、弟や相棒が語る夢というものに人一倍惹かれていた。
「……止めても無駄か。わかった、保安官になったら手紙の一枚でも寄越せよ。約束だ」
「おうよ!お前には一番に報せるぜ。保安官になって帰ってきたら、酒の一杯でも奢ってくれよ?」
――それが、ウェイドが見たエインセルの最後の姿だった。
ウェイドに手紙が届くことはなく、時を経るごとに治安は悪化の一途を辿り、そして……
「……ッ!!」
弟の変わり果てた姿が最後に映り、いつもの夢は終わりを告げる。
「…………フッ。俺には悪夢がお似合いってわけか」
額とこめかみに滲んだ汗を袖で拭いながら、ウェイドはウィスキーの入ったビンを片手に、眠れぬ夜を一人で明かすのだった。
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