魂迷のUNDEAD プロローグ
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245:魂迷のUNDEAD ~ドコニイル…?編~
開始前
あの吸血鬼達と再会……!?
プロローグ
「ん?アンタは確か、ブラートの“私を倒してくれそうな人ランキング記入帳”の一位に名を連ねている……確か***とかいう名前だったか。おいおい、なんでアンタがここにいるんだ?」
閑散とした薔薇の庭園の中で、***は見知った人物と出会う。
――彼の名はリーバス。死にたいのに死ぬことができず何千年と生きている吸血鬼、ブラートの血に宿っているもう一つの魂(人格)だ。
「ああ、ブラートに会いに来たのか?そいつは都合が悪かったな。ブラートは今、この体の中にいねぇんだ。昨晩寝ている間に、アイツの魂がこの体から抜けちまったみたいでな……。要するに、今は俺一人で体を占有してる状態にあるってワケだ」
以前の冒険で、リーバスは最後の刺客としてブラートの前に立ち塞がり、激闘の末に消滅しかけた……が、結果的に消滅を免れ、リーバスの魂がブラートの体に宿るという形で事なきを得たのだった。
しかし、彼の話によると、現在ブラートの魂は行方不明の状態にあるようだ。
「まさか、こんな形で“体が欲しい”って以前の願いが叶うとは思ってなかったが……なんつーか、思ってたのと違うんだよな。そもそも、今の俺の目標はブラートに実力を認めてもらうことだ。勝手に消えちまうなんざ許されるかってんだ」
けどよぉ……と、リーバスは小さく眉をひそめる。
「あのブラートがそう簡単に消えちまうとも思えねぇだろ?おそらくだが、ブラートの魂に何らかの魔術干渉があったんだと俺は考えている。そこで俺が目をつけたのが、ヤツが書いたこの“私を倒してくれそうな人ランキング記入帳”ってワケさ!」
手帳には、過去にブラートの前に現れた強者達の名がランキング形式で掲載されており、さらに、その者達の戦闘データが事細かに記入されているらしい。
そこで、リーバスは“高位魔術に精通している者”“ブラートに恨みを持っていそうな者”を厳選して手帳を調べ上げ、その結果――
「純血の吸血鬼リズ。こいつが怪しいと俺は踏んでいる。んで、話を聞きにリズとやらがいる城の前までやって来たはいいんだが……。案の定、妨害に遭っちまってね」
やれやれといった表情で、リーバスは一本の大木に人差し指を向ける。その上には、猫を彷彿とさせる容姿をしたメイド風の少女が立っており、鋭い殺気をこちらに向けていた。
「おい!そこのステキな腹筋を持つウスノロイケメンと、熟練の旅人っぽい雰囲気を纏ってる凄そうなウスノロ人間!リズ様の庭園に勝手に入った罪は大きいぞ。これ以上城に近づいたら、リズ様の使い魔であるこのシャノワールが自慢の爪でお前達の肉を削ぎ落すからな!」
「……だ、そうだ。まぁ、俺としては爪で斬り比べ合いたいところなんだが……本来の体の持ち主がいなくなっちまった影響か、少し体の調子が悪くてね。今は城を目指すことに集中したい。トーゼン、アンタもついてきてくれるよなぁ?」
リーバスは嗜虐的でありながら、どこか好奇心を感じさせる視線を***に向ける。どうやら彼は***に同行してほしいようだ。
かく言う***も、あの不死身のブラートがどこへ消えてしまったのか気になって仕方がないので、ここはひとまず首を縦に振っておくことにした。
「ハハッ、思い切りがいいな!ブラートが一位に選んだ人間ってだけはある。アンタの戦いを間近で見てりゃ、俺も学ぶことが多そうだしな……。せいぜいよろしく頼むぜ、***さんよ。よし、そうと決まりゃ、さっそく城を目指すとするか……!」
「あ、コラ!シャノの忠告を無視したな!?絶対に許さないからな、ウスノロ共……!」
こうして***はブラートの魂を探しに、リーバスと行動を共にすることになったのだった。
…………一方、その頃。
「ブラートおじさん、どこまで行くんだろ?うーん……。まぁ、ついていけばわかるよねっ」
***とリーバスの遥か後方には、ブラートを慕っている吸血鬼の少女、バネアの姿があった。
「おじさーん。あたしも仲間にいーれーてー」
嬉々とした様子で、バネアはブラートおじさん……ではなくリーバスの背中を追い始めたのだった。
>>吸血鬼を訪ねる<<
ブラートの魂を探す旅、か。
なんだか妙な気分だぜ。
500kmぐらい、アンタなら余裕だろ?
大事なモンはアンタに預けとけば安心なんだってな。
ブラートが言ってたぜ。
トメイトゥを1個手に入れました。
そんじゃまぁ、行くとするか。
なんだか妙な気分だぜ。
500kmぐらい、アンタなら余裕だろ?
大事なモンはアンタに預けとけば安心なんだってな。
ブラートが言ってたぜ。
トメイトゥを1個手に入れました。
そんじゃまぁ、行くとするか。
吸血鬼を訪ねる
エピローグ
息を切らしながら、リズの使い魔であるシャノワールはその場から撤退を図った。
「なんだ、もう終わりかい。せっかく俺の爪も機嫌が良くなってきたってのによ」
「えっ?おじさんの爪って笑ったりするの?すごいっ!あたしにも見ーせーてー」
「…………。俺をよく見てみな。残念ながら今はブラートおじさんじゃない。そして、なぜここにバネアちゃんがいるんだい?」
「あれ?あー、ほんとだ。おじさんじゃなくてワイルドさんだ。なにしてんのー?あ、***さん久しぶり!元気してましたかー?」
「……こっちの質問に答えてくれるかい?バネアちゃん。あと、ワイルドさんじゃなくてリーバス兄さんと呼んでくれ」
噛み合わねぇんだよなマジで……と、リーバスは呆れながら苦言をこぼす。
「えっとねー、おじさんの家に行ったら『吸血鬼サークルの皆と飲み会行ってきます。fromブラート』って書き置きがあってね。あたしも吸血鬼だからついてっていいのかなーって思って、足跡を追ってついてきたの」
「…………。それは俺が書き残してきたものだ。他のヤツらに詮索させないために書いた、ウソの手紙さ」
「えっ、そうなの?あ、でも確かに……字汚かったかも」
「おい」
「ねえ、飲み会ってなーに?」
「……大人の遊びみたいなもんだ。いや、そんなことよりだな」
咄嗟に書いた文章が我ながら稚拙すぎたこと。そして字が汚いと指摘されたことに辟易しながら、リーバスはバネアに引き返すよう伝える。
「もしかして、おじさんに何かあったの?」
が、あまりにも察しが良すぎたので説得は五秒で諦め、リーバスは仕方なくブラートの魂が行方不明であるという現状を説明することにした。
「そっかぁ。おじさん、ワイルドさんに愛想尽かして家出しちゃったんだ……」
「話全然聞いてねぇだろ……。いいかい、バネアちゃん。寝ている間に魂がすっぽ抜けて戻ってこないなんざ、普通あり得ないことだ。事態は思ったより深刻ってことさ。理解したかい?」
「んー。でも、それだったら皆を呼んで探しに行った方がいいんじゃないかな?オーディスお兄ちゃんとかオーリーお姉ちゃんとか。ついでにセプちんとか」
「アイツらはダメだ。特に前者二人は心配性だからな。聞いた話じゃ、以前の旅でもブラートの身を案じて気が気じゃない様子だったらしいじゃねぇか。だろ?***さんよ」
***は前回の旅のことを思い出しながら、リーバスの言葉を肯定する。
「……えへへ、そっか。ワイルドさんなりに皆のこと、ちゃんと考えてるんだね」
「そんなんじゃねぇよ。足を引っ張られても困るから置いてきた……。それだけさ」
「あのね、前におじさんが言ってたよ。『リーバスさんはなんだかんだでオーディス君達と仲良くやってくれてます』って。おじさん、珍しく嬉しそうな顔してたの」
無垢な笑顔でそう語るバネアに、リーバスは「そりゃよかったな」と、ばつが悪そうな様子で返答する。
「とにかく、だ。俺はリズってヤツから話を聞くためにこのまま城に向かう。バネアちゃんは……まぁ、止めても無駄か。しゃーねぇ、一緒に行くか」
「やたっ!ありがとうワイルドさん!」
「リーバス兄さん、だ」
バネアを仲間に加え、***とリーバスは改めてリズの城を目指すことになったのだった……。
246:魂迷のUNDEAD ~ソコニイル…?編~
プロローグ
「お、この気配は……ハハッ、まさかあちらさんから出てきてくれるとはな。手間が省けてなによりだ」
リーバスが微笑を浮かべるのと同時に、コウモリの大群が目の前に出現する。やがて、コウモリの大群は人の形を象り……吸血鬼リズへと姿を変えた。
「我が庭園を荒らす不届き者がいると聞いて来てみれば、まさかお前だったとはな、ブラート……む?ブラート、なのか?」
「あ、違うよー。この人はワイルドさんだよ」
「…………。全く意味がわからぬぞ」
バネアのマイペースな発言に、静かに怒りを覚えるリズ。
「純血の吸血鬼リズ、だったな。単刀直入に聞くぜ」
そんなリズの心情を気にすることなく、リーバスは余裕気な笑みを浮かべながら一歩前に出た。
「アンタがやったんだろう?」
「何をだ?」
「へっ、ネタは上がってんだ。認めちまえば楽になるぜ?トマト丼、食うかい?」
「……何の話をしている?」
……………………数秒ほどの沈黙が流れた。
「…………ん?ち、違うのか?」
「だから何の話だと聞いている!なんだ、遠路はるばる私をバカにしに来たのかっ!?」
リズが黒幕だと完全に思い込んでいたリーバスは、てっきり「フッ、バレてしまっては仕方がない」といったセリフが返ってくるものだとばかり思っていた。というより、それ以外の返答を全く想定していなかった。
「我が庭園に許可なく足を踏み入れたうえ、さらに私を愚弄するかのような発言……。お前達、覚悟はできているのだろうな?」
純血の吸血鬼であることに誇りを持っているリズは、中途半端な吸血鬼を毛嫌いする傾向がある。
ゆえに、吸血鬼の中でもさらに特異的な存在であるリーバスやバネアが自分の領域内に入っているという事実に、彼女が怒りを覚えないはずがなかった。
「その……なんだ、決めつけて悪かった。でもよ、アンタ確か高位魔術に精通してるんだろ?なぁ、話だけでも」
「黙れ。お前達のせいで私はこのうえなく不快な気分になった。今はお前達の言葉を耳に入れることすら厭わしい……。我が高貴なる心を害した罪、その鮮血をもって償ってもらうぞ、ブラート」
「いや、俺は微妙にブラートじゃなくてだな……っておいおい、殺る気満々かよ」
……どうやら交渉は物の見事に、それはもう見事に決裂したようだ。
「ねえねえ、ワイルドさん。あの人、どうしてあんなに怒ってるの?」
「あー、多分俺らの言動とか存在が気に食わないんだろ。ついでに言うと、君の大好きなおじさんも相当恨みを買ってるらしい。まぁ、逃げようにも戦闘は避けられねぇみてぇだし、ここは迎え撃つ方向で……っとと?」
「……?どしたの、ワイルドさん」
頭を抱えながらふらつくリーバス。よく見ると、顔色もあまり優れないようだ……。
「いや、急に目眩がな……。さっき***には言ったが、ブラートの魂が抜けちまってからどうも調子が悪くてね」
「えっ、大丈夫……?ケチャップ飲む?」
「ケチャップは飲み物じゃないぜ、バネアちゃん。せめてそこはトマトジュースとかに……うおっ、と!?」
突如、リーバス達の真上からリズの放った漆黒色の雷が降り注いだ。反射的にリーバスとバネアとかいちょは散開し、ギリギリのところで雷撃を避けることに成功する。
「安心するがいい、ブラート。今日は死ぬまで殺し続けてやる。肉片一つ残さず徹底的に……な」
「し、しびれ切らしやがった……。ったく、ブラートの旦那はどんだけ愛されてんだよ。ちょいと嫉妬しちまうねぇ……!」
リズから逃げられないことを悟ったリーバス達は、ひとまず彼女を迎え撃つために戦闘態勢に入るのだった……。
>>血戦に挑む<<
位置登録?それがアンタの強さの秘密ってワケかい?
薔薇の庭園ねぇ。見事なもんだ。
あのブラートが評価した相手だ。気を引き締めねぇとな。
リーバス兄さんは意外と協調性があることで有名なんでね。
騒がしいのは嫌いじゃないぜ?
期間限定だとかチャンスだとか……そういう言葉に弱いんだよ、俺は。
ま、適度に楽しみながら進もうぜ。
リズってヤツから話を聞くまでは帰れねぇ。まぁ、話が通じる相手かわからんが……。
<血戦に挑む>!!
エピローグ
「あ、待ってリズリズ。あのね、これ以上戦うとね、お庭が大変なことになっちゃうと思うの」
大技を放とうとするリズ……に、周囲を見渡すよう告げるバネア。
「誰がリズリズだッ!妙なあだ名を…………むっ。こ、これは」
……バネアの言う通り、リズの庭園はかなり荒れ果ててしまっていた。
「あー……その、なんだ。一応言っておくが、庭園がボロボロになったのは、ほとんどアンタのド派手な攻撃の影響によるもんだぜ?」
「~~~~ッ!だ、黙れブラート!そもそもお前達が来なければ、こんなことにはならなかったのだ!」
強気に言いながらも、リズは自分で庭を荒らしてしまったことに、少ししょんぼりしているようだ。
「はぁ……もういい、興が冷めた。今回は見逃してやる。さっさと出て行くがいい」
「待て待て。こっちはアンタに聞きたいことがあるんだ。それを聞くまではテコでも動くつもりはねえ」
「フン、下賤な血を持つ者に語ることなどない……と言いたいところだが、これ以上ここに居座られる方が迷惑だ。さっさと要件を言え。手短に、な」
リーバスは自分がブラートではない事や、これまでの経緯を丁寧にリズに説明した。
「もう一つの人格、か。どうりで気配も戦い方も異なるわけだ。そして、お前は宿主の魂を探すためにここまで来たというわけか……。まぁ、お前の予想通り、魔術の干渉があったのは間違いないだろう」
「やっぱりな……。リーバス兄さんの予想はよく当たることで有名なんだ。で、どんな魔術なのか心当たりはあるかい?」
「……一部のネクロマンサーが使用するという高位屍術“魂奪い(ソウルテイカー)”。文字通り、生者の魂を奪い取る術だ。私の知る限りでは、魂を奪うような術はこれ以外に存在しない」
そういえば……と、リズは顎に手をそえながら眉をひそめる。
「ダニッチという北東の人里に、夢や魂といった精神的な部分に干渉する力に特化したネクロマンサーがいる……と、使い魔の一人から聞いたことがある。」
「なんでもそやつは、他者の夢に接触するという希少な能力を持っているらしい。ブラートの魂はそやつに奪われたのかもしれぬな」
「夢に接触するネクロマンサーだァ?俺とブラートは記憶を共有しているが、そんなヤツに会った記憶はねぇぞ?」
「知性のない男め……。夢とは、魂が固有に持つ独立した無意識の領域だ。つまり、件のネクロマンサーがブラートの夢に接触した場合、お前はそれを感知することができないのだ」
「…………。言われてみりゃあ、俺とブラートは夢までは共有してねぇな」
「実力のあるネクロマンサーであれば、実際に対象と対面せずとも、遠隔から夢を通して魂に術をかけることも不可能ではない……。まぁ、私が知るのはそれぐらいだ」
……どうやら、次の行き先が決まったようだ。
「助かったぜ、リズさんよ。事が一段落したら、土産でも持ってまた来るからよ」
「二度と来るな。いや、そもそもお前とは二度と会わないかもしれぬがな。やれやれ……まだ消滅していないのが不思議なぐらいだ」
「あ?そりゃどういうことだい?」
「リーバス、だったな。お前のその体は本来ブラートのものだ。が、現在はブラートの魂が抜け、お前だけが体を占有している。異なる体に異なる魂しか存在していない状態……。拒絶反応が起こるのは当然だ」
「…………。お、おいおい。それってまさか……俺の魂が近いうちに消えちまうってことか!?」
「ククク……。マヌケで愛らしい顔だな。今回はそれが見れただけでもよしとしよう。では、な」
体調不良の原因と、それが招く結末を知り、青ざめながら唖然とするリーバス。
そんな彼の仕草に満足したのか、リズは勝ち誇った笑みを浮かべながら城へと戻っていった。
「んー?話が難しくてよくわかんなかったなぁ。ねえ、ワイルドさん……あれ、ワイルドさーん?聞こえてますかー?」
「…………。***、バネアちゃん」
「はーい?」
「ダニッチって場所に向かうぞ。今すぐにだ!」
「はーい!」
状況をよく理解していないバネア。そして、タイムリミット付きの体という、以前のブラートと似たような境遇にあるリーバス。そんな二人と共に、***はダニッチという町を目指すのだった……。
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