猛執のアルカディア プロローグ
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248:猛執のアルカディア PHASE1.好機
開始前
闘技大会に参加……!?
プロローグ
「来たか、人間!うむ、まずは召喚に応じてくれたことに感謝を……って、あれ。なんで二人も?おかしいな、召喚した人間は一人だけだったはず……。まぁ、別によいか」
赤い髪を二つに結んだ魔族の少女の声を耳に入れながら、***は周囲を見渡す。
寒々とした大地、足元に描かれた幾何学的な模様が特徴の魔法陣……そして、何度か肌で感じたことがある独特の空気。どうやらここは、魔界のどこかのようだ。
「わ……わわあっ!?召喚陣っぽい魔法陣、耳が尖った魔族感っぽい女の子、なんか神殿っぽい場所……。も、もしかしてコレ、異世界召喚というヤツなのでは!?ラノベ的な展開なのでは!?あらぁああ!神木ココ、初めてにして突然の異世界訪問に興奮が抑えられない状態にあります!」
***の隣には、おそらくこの魔法陣によって召喚されたのであろう、やたらと賑やかな少女の姿があった。名をココというらしい。
「コホン。あー、急なことで驚いているかもしれんが、ひとまず召喚に応じてくれたことに感謝する。私の名はアリル。魔界にある小さな小さな国、カイドナを治めている魔王だ」
「ま、魔王!?あたし、魔王に異世界召喚されちゃったんだッ!?あわわわ、まさかのヴィラン側……。でもでも、この間読んだラノベでそういう展開もあったし、きっとなんとかなる!そうだよね、アリルちゃん!?」
「……ココ、と言ったな。ちょ~っと静かにしてもらってよい?あと、出会って数秒で“ちゃん呼び”はさすがに馴れ馴れしいと思うぞ。まぁ、私は懐が広いから許してやるが」
赤髪の少女アリルはやや疲れ気味な声色でそう言うと、ココと***に自身の境遇を語り始める。
「さて、私が人間を召喚したのには理由がある。今、魔界では魔王ネルガル主催の闘技大会の予選が行われていてな。この大会で優勝すると、最近発見された“アルカディア”という広大な領土を景品として手に入れることができるのだが……」
実は……と、アリルはややバツが悪そうな表情で続ける。
「我が国カイドナは、こうしている今も衰退の一途を辿っていてな。というのも、元々カイドナは資源が少ないうえ、大地から得られるマナ(魔力の源)も極めて少ない。限りある資源を削ってなんとか国力を保っているが、先はそう長くない状態にあるのだ」
「ふむふむふむ。田舎の過疎化がハンパないってことだね」
「容赦ないな、お前……。そこまでハッキリ言われると軽く傷つくのだが、まぁそういうことだ。かと言って、下手に領土を広げようとすれば他の魔王や名のある魔族達に目をつけられてしまう。ゆえに」
「闘技大会に優勝して領土を手に入れないと、アリルちゃんの国が滅んじゃうってワケだね!そしてそして、あたしはその闘技大会に出場してアリルちゃんを優勝に導くために召喚されたってワケでしょ!?でしょでしょ!?」
「う、うむ。まぁだいたいそんな感じだ。順応力高いな、お前……。助かると言えば助かるが、ちょっと怖いぞ」
「ふっふ~ん♪あたし、人間界ではオカルト研究部の部長なの!だから、町がゾンビで溢れた時と異世界転生した時のシミュレーションはバッッチリなのっ!」
“だから”の意味がよくわからなかったが、とりあえずココはやる気満々のようだ。
「それでそれで!?あたしは何をすればいいの?アレだよね、まずは秘められた力が覚醒するフェーズに入るんだよねっ?」
「厳密には、人間が必要になるのは大会の本戦に入ってからでな。しかし、予選の段階で人間を呼び出してはいけない……というルールはない。まぁ要するに、早いうちに連携を取るために、今このタイミングでお前を召喚させてもらったというワケだ」
「わお……!なんか姑息で外道な魔王って感じだね、アリルちゃん!」
「なんとでも言うがいい。大会に参加するのは各国を代表する魔王達だ。アグラッド国のジルドー、プーアル国のセイアスといった強豪達と肩を並べるためにも、打てる手は全て打たねばならん!さあ、そうと決まれば早速予選会場へ向かうぞ。会場への案内人をこれ以上待たせるわけにもいかんしな」
「オッケー!全力でついてっちゃうよ!あれ、ところでこっちの人は……あ、***さんって言うんだ。この人もアリルちゃんが召喚したの?」
「いや、私が召喚したのはお前だけだぞ。まあ、召喚陣に何らかの手違いがあったのだろう。すぐに送還してやりたいところだが、今は時間がない。ひとまずかいちょとやらも、私についてくるといい」
……極小国の魔王アリル。彼女から“大きな運命の片鱗”を感じ取った***は、アリルの提案に乗ることにした。
「遅かったですね、魔王アリル。あと数秒でも遅れたら引き上げようと思っていました。このリルティを待たせるとは、いい度胸です」
進んだ先で待っていたのは、鎌を持った一人の死神だった。どうやら彼女が、先ほどアリルが言っていた案内人に該当する人物のようだ。
「すまぬ、ちょいと準備に時間が掛かったものでな。では、案内を頼むぞ!」
「……先にお伝えしておきますが、予選はすでに始まっています。会場へ行くまでの道中で様々な妨害があることでしょう。私とはぐれた時点で失格になりますので、ご注意を」
こうして***は、アリルとココと共にリルティの背中を追うことになったのだった。
会場に向かう!
準備はいいか!?
ハンカチ、ちり紙は持ったか?お腹痛くないか?
まずは500kmほど走るとしよう!
食後の運動には丁度よかろう?
そうだ、これを預ってくれないか?
いや、なんとなくな。
チャージステッキを1個手に入れました。
さぁ、行くぞ!!
栄光への道を駆け抜けるとしよう!
ハンカチ、ちり紙は持ったか?お腹痛くないか?
まずは500kmほど走るとしよう!
食後の運動には丁度よかろう?
そうだ、これを預ってくれないか?
いや、なんとなくな。
チャージステッキを1個手に入れました。
さぁ、行くぞ!!
栄光への道を駆け抜けるとしよう!
会場を目指す!
エピローグ
「ふんっ、舐められたものだな。まぁよい。賞賛の言葉として受け取っておこう」
案内という名目の第一予選を突破したアリルは、リルティから皮肉交じりの賞賛を受け取る。
「他の名のある魔王達はすでに会場に辿り着き、最終予選をクリアしているようです。あなたも後に続けるよう、ほんの少しだけ祈っています。では……」
リルティはペコリと頭を下げたあと、黒い霧に包まれ姿を消した。
「ねぇねぇアリルちゃん!すっっごい今さらなんだけど、さっきのリルティって子は結局何者だったの?」
「うむ?ああ、彼女は魔王ネルガルに仕えている、闘技大会の運営側の者だ」
「はいはいはい!アリル先生質問があります!魔王ネルガルって誰ですかッ!?」
「ああ、そういえば説明がまだだったな。ネルガルは、魔界にて多くの領土を持っている魔王の名だ。それゆえに、ネルガル自身は領土争いには興味を示していない」
アリルの話によると、闘技大会の優勝景品となっている新たな大地アルカディアを欲しがっている者は、そのほとんどが小国を治めている魔王なのだという。しかし、彼らが力で奪い合いをしてしまえば大きな戦争に発展してしまう。
それを避けるため、魔界一の国力を持つ魔王ネルガルの運営の下で闘技大会を行い、その優勝者がアルカディアの領土権を手に入れる……ということが、数か月前に行われた魔王サミットで決定した、とのことらしい。
「なるほどねぇ!昔の漫画でそういう展開あったなぁ……。つまりつまり、これから血で血をゴシゴシと洗濯するトーナメントが開催されるってことだよね?くぅ~、燃えてきたぁ!」
「本戦はトーナメントではなくバトルロイヤル形式だが……まぁ、そのことは今置いておこう。今はまず、最終予選を突破するのが先決だ。今度は本格的にお前の力も借りるからな。期待しているぞ、ココ」
「おまかせあれだよ、アリルちゃん!でもでも、あたし何すればいいの?今のところ、異世界召喚の特権でもあるチート能力に目覚めてもいないみたいなんだけど……。」
「変わったものといえば……召喚された時にはすでに持ってた、このコンセントみたいな杖?しかないんだよねぇ。うーん、何度見てもファンタジー感ゼロだなぁこれ……」
ココの言葉に、アリルは不敵な笑みを浮かべる。
「案ずるな。我が真の力を引き出せるのはお前しかいない。自信を持つのだ、ココ」
「おおっ、我が真の力……ってなんかカッコイイ!初めてアリルちゃんが魔王に見えたかもッ!」
「っておい、今までなんだと思っていたのだ!?確かに私は名声もなければ、領土も多くは持っていない。あまり自分を卑下したくはないが、魔王の中でもマイナーな存在ではあるだろう。しかし、私は私なりに外の脅威から自分の国を守り続けてきたのだ」
アリルの国は国土も狭ければ、資源も少ない。それゆえ民の数も少なく、まともに戦えるのはアリルだけなのだという。
「私は自分の力を、自分の国を守ることだけに使う。食あたりで亡くなった先代魔王の父に、私はそう誓ったのだ……」
「ええっ!?魔族って食あたりで亡くなっちゃうの!?」
「当然だ。魔族だって生き物だからな。だから私は、父の遺志を継いで国を存続させなければならないのだ。そのためには、この闘技大会に優勝して、アルカディアという領土を手に入れる必要がある」
「……そっか。アリルちゃんはお父さんっ子なんだねぇ。あたしはおばあちゃんっ子だからその辺よくわからないけど、家族のために闘技大会に参加っていうシチュエーションにはズキュゥウンと胸を打たれちゃったよ!こりゃ放っとけないね!」
嬉々とした様子でそう言うと、ココは首を大きく縦に振った。
「了解したよ、アリルちゃん!あたしにできることがあるなら何でも言ってね!アニメとゲームと漫画とラノベと映画とネットサーフィンで手に入れた知識と技術で、全力でアリルちゃんをサポートするから!」
「う、うむ。よくわからんが、期待しているぞ。では、最終予選が行われる会場へ赴くとしよう!」
ハイテンションなココの勢いにやや振り回されながらも、アリルは大きく深呼吸をし、会場へと進んでいくのだった……。
猛執のアルカディア PHASE1.好機完
最終予選の内容とは!?
最終予選の内容とは!?
249:猛執のアルカディア PHASE2.兆候
プロローグ
「むっ!?この気配は……」
係の者に案内され、ステージへと向かうと……そこにはなんと、魔王ネルガルの姿があった。
「これは驚いたな。まさか、最終予選の相手が主催者とは……。一体、どういう風の吹き回しなのだ?」
想像すらしていなかった大物の登場……。しかし、アリルは物怖じすることなく問いをぶつける。
「あえて言おう。そもそも私は、闘技大会などといった行事とは無縁でいたいのだ。元々、騒がしいのが苦手なものでな……。しかし、アルカディアを求めて魔界が戦乱の渦に飲み込まれれば、魔界はより騒がしい泥沼と化してしまうだろう」
「……なるほど。それを防ぐために闘技大会という“処置”を執ったということか。さすがは魔界一の国土を持つ強国の魔王……やることのスケールが凄まじいな。しかし、喧騒を好まぬというのなら、なぜこの場にわざわざ?」
「……本来であれば、私はあくまで責任者という立場であり、表舞台に立つ予定はなかった。だが、お前のようにアルカディアを求める者達が想定以上に多かったものでな。そう、あえて言うのであれば……人手不足というわけだ」
溜息を吐きながら、ネルガルは気だるげに続ける。
「知り合いの神父や冥界の女王にも助力を求めたが、前者からは『俺はあんたの雑用係じゃねぇ』と突っぱねられ、後者の方からは『ミルマール先生の即売会があるので』とワケのわからぬ理由で断られ……結局、こうして私が出てくるに至ったというワケだ」
「そ、そうか。苦労人なのだな。とはいえ、魔王ネルガルと一対一で戦える機会などそうあるまい。私としてはこのうえない機会……。疲れているところ悪いが、相手をしてもらうぞ!」
「…………。魔界の辺境地にある極小国カイドナを統治する魔王、アリル……だったな。魔界にて魔王を名乗る者は多いが、その大半が名ばかりの愚者であることもまた多い。まぁ、私としては……」
ネルガルは槌を構え、凄まじい波動と共にセーブしていた魔力を解放した。
「ただ、仕事が終わればそれでいい。さて、お前の勝利条件はただ一つ、私に実力を認めさせること。敗北条件は私を飽きさせることだ。勢い余って殺してしまうかもしれぬからな……。最初から全力で来るといい」
「ほう、全力を出してよいのだな?ならば……ココ!先ほど話したあの作戦で頼む!」
ニヤリと微笑を浮かべ、アリルはココの名を呼ぶ。すると、ココは「おまかせあれぇえ!プラグ・オン!」と元気よく声を出し、先端がコンセントプラグ状になっている杖を…………アリルの背中にズン、と刺した。
「ぁ痛っ。お、おぉぉぉ……!来た、来たぞ!ココが内に秘めている莫大な魔力が流れ込んでくる……!ココ、もっとだ!もっとチャージ!!」
「あぐぐぐぅ!ア、アリルちゃん……あたしもう、フラフラしてきたよぉ……!」
「大丈夫だ、まだいける!がんばれココ!オカ研とやらの底力を見せてくれ!がんばれがんばれ!」
「……!そ、それを言われちゃあ、あたしも食い下がれぬぇぇええ!!」
ココは杖を通し、体内の魔力のほぼ全てをアリルへと受け渡した。
「はえぇぇ……。出し切ったよぉ、アリルちゃぁん……ちかれたぁ……」
「うむ、助かったぞ!***、ココを休ませておいてやってくれ……さあ、待たせたな!」
バチバチと魔力を迸らせながら、アリルは仁王立ちで改めてネルガルの方に向き直る。
「あえて言おう……それはルール違反なのではないか、と。そもそも、人間とペアを組んで戦うのは本戦に入ってからだとルールブックに記述したはずだが」
「うむ!しかし“予選中に人間から力を借りてはならない”とは記述されていなかった!つまり、これはルール違反ではない!!」
「……時間がない中で作ったルールの穴を突いてきたか。だが、結果としてそれは自らに実力がないことを認めているようなものだぞ?」
「なんとでも言うがよい!私は国のために、なんとしてもアルカディアを手に入れねばならぬ。勝率を上げるためなら、モラルとルールが許す限り何でもする覚悟だ!」
「……まぁ、いい。単純な実力で競うことだけが戦いではないからな。小細工は認めよう。ただし、お前の実力を認めるか否かは……これからの戦い次第だ」
>>力を示す<<
位置登録?ふむ……積極的にこなしていった方がお得らしいな。
一対一で力をぶつけ合うにはもってこいの場所だな!
相手の力は未知数……ふふ、燃えてくるではないか!
一致団結!私の好きな言葉だ!
うむ!皆で手を取り合って行くぞ!
チャンスを逃せば、我が国に未来はない!!
前進あるのみだ!でも、調子が悪くなったら言うのだぞ?
魔王ネルガルは強力な氷の術を使うと聞く。油断は禁物だぞ!
エピローグ
「あえて言おう……合格だ、刃を納めよ。これ以上の戦いは審査ではなく命の奪い合いになってしまう。それに、私も無駄に消耗したくないのでな。疲れるのは嫌いなのだ」
「……その様子だと、まだまだ力を温存しているようだな。まぁ合格ということなら文句はない。不要な戦いは私も望まん」
短期戦に持ち込めばアリルに勝機が。長期戦になればネルガルが確実に勝利を掴む……そんな戦況の中、ネルガルの静止によって予選は終了した。
「さて。本戦出場にあたって……魔王アリル、お前にこれを渡しておく」
「……?な、なんだ、この変な紙は?」
ネルガルに手渡されたのは、人の形を象った小さな羊皮紙だった。
「それは召喚器となる依り代……呪符の一種だ。その呪符にお前の魔力を流し込めば、第三者が呪符を使うことでお前という存在を“意志の通った幻体”として召喚することが可能となる。ここで言う第三者とは、すなわちパートナーとなる人間のことを指す」
“アルカディア”を巡る闘技大会の本戦は、魔族と人間の二人一組で行われる。
また、魔界には『領地の権利を決する戦いをする際は、その領地内で戦わなければならない』という掟があるため、本戦はアルカディアで行われるようだ。
「うむ?つまり、実際にアルカディアで戦うのは私本人ではなく、あくまでココが呼び出す幻体の私……ということか?」
「その認識で相違ない。当然ながら、他の参加者達も同じ条件でアルカディアに降り立つ。そして、最後に残った一組だけがアルカディアを手にすることができる、というワケだ」
「……試合に関することは理解した。が、なぜそのような複雑なルールを用いるのだ?人間の力など借りず、普通にアルカディアで試合をすればよい話ではないか」
「理由は三つ。一つ目は、次元の歪みから突如出現したアルカディアという大地の特異性にある。アルカディアには内部から強固な結界が張られており、一定以上の力を持った魔族は立ち入れない構造になっているのだ。簡単に言うと」
「はいはいはい!つまりつまり、ゲーム的な言い方をするとアレだよね、レベル制限が掛かったエリアってことだよね!?」
いきなり会話に入ってきたココに、やや戸惑うネルガル。
「その例えが真に正しいか否かの判断はできぬが、ニュアンスとしてはそういうことだ。しかし、魔族ではなく」
「人間ならアルカディアの中に入れるってことだねっ!だから先に人間がアルカディアに入って、呪符を使ってパートナーの魔族を召喚する!そうすれば魔族もアルカディアに入れちゃうってことでしょ!?」
「……あえて言おう。グイグイと距離を詰めてくるのは気に喰わぬが、理解が早いのは助かる、と」
心底疲れた顔をしながら、ネルガルは大きくため息を吐く。
「二つ目の理由は、単純に公平を期すためだ。その呪符を使って人間が召喚した魔族の能力は、その人間のポテンシャルによって強さが決まる仕組みになっている。これにより潜在的な力の差がある程度埋まり、対等な条件で戦闘を行うことができるというわけだ」
「なるほどなるほど、メモメモ……。はい、ネルガル先生!三つ目の理由は何でしょう!?」
「安全のため、だ。今回の戦いはあくまで闘技大会……命の奪い合いをするワケではない。その呪符によって召喚された幻体は、たとえ致命傷を負っても消滅するだけ……。本体には何の影響も及ばさない仕組みになっている」
加えて、この呪符によって召喚された幻体は、人間に危害を加えることはできないようになっているらしい。
「ルールの説明は終わりだ。本戦の開催は一週間後。それまでは好きに過ごすといい。では、な」
やや訝しげな視線でアリルを見つめたあと、ネルガルはコロッセオを後にした。
「うむ!皆の者、ひとまずはご苦労であった!今日は国へ帰り、予選突破を祝して宴を開くとしよう!」
「おおおっ、打ち上げだね!?やったぁ!あたしもお腹ペコペコだよ~!焼肉焼肉~♪」
「いや。うちの国では肉がほとんど手に入らんから、野菜がメインだぞ」
「うえええぇ……。野菜キラーイ……」
一喜一憂するアリルとココ。そんな二人の様子を、ネルガルは遠くから見つめていた。
「魔王アリル。戦闘中に時折見せていた、あの“異質な力の予兆”を鑑みると……明らかに普通の魔族ではないようだな。放置するのはやや危険、か?そもそも、争いが起こる前に闘技大会という処置を早急に行ったはいいが、アルカディアという大地にもまだ謎が多い……」
色々と詳しく調べる必要があるな……。小声でそう口にしながら、ネルガルは城へと戻っていったのだった。
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